軟弱地盤がある大浦湾側の工事着手から20日で1か月。普天間基地の辺野古移設をめぐるこれまでの経緯を振り返るとともに、残された課題を考えます。
▽仲井眞知事(2013年当時)
「(埋立を)承認することと致しました」
事態が大きく動き出したのは、今からさかのぼること11年前。当時の知事により承認された辺野古沿岸部の埋立申請に基づき、国は工事に着手しました。

2018年には土砂が投入され、辺野古側の海で陸地化が進む一方、軟弱地盤が見つかった大浦湾側では、国は埋め立てに着手できず。
▽玉城知事(2021年)
「本日、(埋立の設計変更を)不承認とする処分を行いました」
その後、国は地盤改良のため改めて県の承認を求める設計変更申請書を提出しますが、県は調査不足などを理由に不承認としました。

そこから工事を進めたい国とこれを阻止したい県との間で攻防が続き大きな山場となったのが去年開かれた“代執行”訴訟。
▽玉城知事
「(沖縄県の)行政権限を国は奪ってはならない。そう書いてあるのが憲法の地方自治の本旨です。(国は)権限をとりあげて、我々の未来を埋め立てようとしている。それに対して正々堂々と皆さんと同じ思いで、しっかり主張してまいりたいと思います」
県は、約7割が埋め立て反対票を投じた県民投票など、県民の民意を背景に最後まで不承認の姿勢を崩すことはありませんでした。
しかし、裁判では県が敗訴。国は異例の「代執行」に踏み切り、県に代わって設計変更申請を承認しました。
▽(1月・衆院本会議施政方針演説)
岸田総理「普天間飛行場の1日も早い全面返還を目指し、辺野古への移設工事を進めます」
国は今年に入ってから大浦湾側で着々と作業を進め、先月、護岸の造成を始めています。
▽9月20日・上空から平良優果記者
「大浦湾の本格的な工事着手から1か月がたった辺野古沖上空です。埋め立て予定区域の4分の1にあたる辺野古側は既に陸地化しています。そしてかろうじて姿をとどめている大浦湾にも今後土砂が投入されその姿を失います」

防衛省は当初、総事業費を3500億円と説明。しかし、大浦湾で軟弱地盤が見つかったことで、現在は約2.7倍の9300億円と算定しています。去年末までに総事業費の57%にあたる約5319億円を支出。一方、工事の進捗は埋め立て土砂量で全体の約15%となっていて今後の難工事を前に事業費の増大と工期の長期化は避けられない状況です。
また、世界有数のおよそ5300種以上の生物が命を育んできた大浦湾。そこに生息する世界有数の豊かな生態系への影響は計り知れません。多くの疑問が残るまま、この海は新たな軍事基地として姿を変えようとしています。
