中小企業の次世代を担う若手後継者が新規事業プランを競うその名も「アトツギ甲子園」で、大分県日出町の企業が日本一に輝きました。
大分県日出町にある「グリーンエルム」。直営と提携あわせておよそ4.5ヘクタールの農場で苗木の生産や販売を手がけています。

父の代から30年以上続くこの企業の次世代を担うのが西野文貴さんです。
(グリーンエルム・西野文貴さん)「植物と一緒にいるのが一番面白いし楽しいかもしれない。飽きない表情を毎回するので、やっぱり植物ってすごいなって思いますね」
3月、東京で開かれたアトツギ甲子園。中小企業の若手後継者が既存の事業の枠を超えた新たなビジネスプランを競う大会です。西野さんは森づくりをテーマにした事業をプレゼンして決勝大会15人の中で最優秀賞となる中小企業庁長官賞を受賞しました。

西野さんが提案したビジネスモデルでは放置された森林を伐採して地域で植樹祭などを開催。そこに企業が参加することで資金を確保しながら継続的な森づくりを進めていきます。
アトツギ甲子園では人と自然が共存する社会性と企業を組み込むビジネスの実現性が高く評価されました。発案のきっかけとなったのが東日本大震災の被災地での経験です。
(グリーンエルム・西野文貴さん)「東日本大震災が起きた後に、企業がCSR事業の1つとして森づくりをしていた。企業のCSRで森づくりってできるんだなっていうところがこのビジネスモデルのスタート」

西野さんは企業が果たす社会的責任「CSR」に着目。社会貢献に取り組む企業から資金を集めることで継続的な森づくりのビジネスを発案しました。また、大学で学んだ林学の知識を活かしてその地域に合った植樹で災害のリスクを下げることに加え、長期的な目線で森づくりを進めようとしています。
(グリーンエルム・西野文貴さん)「この地域に合った20~30種類を植樹することで、災害にも強く生物多様性にも貢献するような森をつくっていこう」
こうした植物の専門知識とおよそ200種類の苗木の生産を手がける会社のノウハウを組み合わせて新規事業を実現。現在は父で社長の浩行さんと兄の友貴さんとともに本格的な事業化を目指しています。
(兄・友貴さん)「新しい風が吹いてようやくこのビジネスができるようになったなという感じがします」
(父・浩行社長)「私からすると目からうろこでみんなに真似してもらって、自然環境豊かな森づくり、災害に強い森づくりができたらありがたい」
社会の環境意識の変化やSDGsを追い風に西野さんのビジネスに興味を持つ企業は多くすでに関東の複数社の参加が決定しているといいます。
(グリーンエルム・西野文貴さん)「今回のプロジェクトで(賛同の)声をいただいていること自体が1つ前進したなという実感がある。これから先このプロジェクトを通して人と自然との距離が少しでも縮まるようなことができれば幸い」

今年の秋には子どもが参加する植樹イベントを国東市で開催する予定です。アトツギ甲子園で日本一に輝いたビジネスモデルは県内、そして全国へ広がっていこうとしています。