コロナ禍で飲食の機会が減り、若者のアルコール離れが進んでいます。この状況を打破し、消費のすそ野を広げようと、あの手この手で模索する酒類業界の取り組みを追いました。

大分県豊後大野市千歳町で93年続く「藤居醸造」。代表銘柄の「泰明」を始め、創業当時から受け継がれる昔ながらの製法にこだわる蔵元です。

そんな老舗酒蔵が新たな商品の製造を開始しました。それが…ここでしか味わえないクラフトビールです。

■若者のアルコール離れが加速

(藤居醸造・藤居淳一郎社長)「若者が酒離れ、焼酎や日本酒になかなか入ってこれないので、まず低アルコールのクラフトビールを飲んでもらって、それから焼酎につなげようと」

年々、若者のアルコール離れが加速しています。国の調査で週3日以上、飲酒の習慣がある人を世代別にみると、この20年で全世代が減少傾向にありますが、特に20代は最も減少率が大きくなっています。

20代の県民に事情を聞いてみると…

(大分市内で)「コロナで飲み会に行くのが怖いという子は多い」「ごはんは食べるけど飲まない。お酒がないと…と思ったことはない」「誘われたら飲みに行くくらいで文化がない。日本酒や焼酎はまだおいしさがわからない」

若者のアルコール離れにコロナ禍で低迷する焼酎の消費量。打開策として藤居醸造が考えついたのがクラフトビールでした。

商品開発とあわせて飲食ができる新たな施設も開設。若い人にお酒のおいしさを知ってもらう拠点にしたいと話します。

(藤居淳一郎社長)「今まで焼酎に振り向いてくれなかった人にまず飲んでもらうことが大切なので、ビールをきっかけにいろんな酒を飲んでもらえたら」

酒類業界の対策はここ数年で急加速しています。

(酒の大平・大平隆史社長)「この辺の陳列が県産の酒で、お酒離れっていうこともあって各蔵はいろいろと工夫を凝らしている状況」

大分市の酒販売店には既存の日本酒や焼酎だけでなく、新感覚の商品がずらりと並んでいます。中にはフルーティーで甘口のものや…アルコール度数を7%程度に抑えたものなど、飲みやすさを重視した酒が若い人や女性に人気だと言います。

■酒蔵は「死活問題」

(大平隆史社長17秒)「コロナで飲酒機会が減って酒蔵は死活問題なので。こういう時代だからこそコミュニケーションを円滑にする意味でもいろんなお酒を楽しんでもらえたら」

また、県酒造組合も先日、大分市の商業施設に期間限定のバーを出店。県産の酒をベースに作ったインスタ映えするカクテルを提供し、若年層の取り込みを図りました。


(県酒造組合・久家里三会長)「コロナ禍の打撃が大きくて、軒並み売り上げもこの2、3年、各蔵元はダウンしているので。若い世代に酒の取っ掛かりとして飲んでもらって、これからの消費拡大につながれば」

ネットやSNSの普及など娯楽が多様化するライフスタイルの中にお酒の居場所は見出せるのか… 

酒類業界の挑戦は続きます。