入り江が連なる海岸線を生かしてブリやヒラメなどの養殖で全国でもトップレベルの生産量を誇る大分県佐伯市蒲江では、台風14号の影響で養殖していた魚が大量に死んで打ち上げられるなど、水産業に大規模な被害が広がっています。魚の大量死の原因や支援が行き届かない生産者の実情を取材しました。

(田辺記者)「佐伯市蒲江の西野浦です。倉庫が建っていましたが台風の影響で屋根や壁が崩れおち、骨組みがむき出しとなっています」


台風14号によって最大瞬間風速50.4メートルという観測史上最大の暴風に見舞われた佐伯市蒲江。西野浦地区にある水産会社の中には、海岸沿いにあった倉庫が吹き飛ばされたところもありました。

また、少し離れたフグの養殖小屋は倒壊。被災してから毎日、後片付けと応急作業に追われていて、途方に暮れています。

(フグの養殖業者)「今回の台風の風の威力ですかね、湾の中で転覆している船が複数見られた。やっぱり今回の台風の風の規模というのは今までとは桁違いかな」


(高橋記者)「養殖されていたとみられる魚が数多く打ち上げられています」

台風の通過後に発覚した養殖魚の大量死。関係者によりますと被害はハマチが中心で数十万匹に上るおそれがあるということです。この大量死につながった大きな原因が「赤潮」でした。


(浪井丸天水産・浪井大喜代表)「避難させる場所が赤潮と低酸素の潮が入っていて沖合においていても筏が壊れてしまうので、漕ぎこまざるを得なかったんですけど」


入津湾では台風と重なるように赤潮が発生し、酸素濃度が低下。養殖業者は沖合のいけすを荒波から守るためにやむなく湾内に避難させていたのです。県が29日発表した水産業への台風被害は1億3000万円ですが、これから被害額が大幅に増える見通しです。

(フグの養殖業者)「1トンくらい入る金属製の容器に何十個もハマチやカンパチの死骸を入れている風景を見た。湾内にいけすを避難させるのもかなりもどかしいというか、危険なところにあえて漕ぎこまなければなならない」


さらに問題となっているのが陸上養殖です。

(幸丸水産・木野雄貴さん)「屋根が波と風で向こうに飛ばされて道を塞いだ状態で通行止めになった」

畑野浦地区でヒラメを養殖している幸丸水産。暴風と大波で建物は大きく崩れていて出荷直前のヒラメが大量に死にました。


(木野雄貴さん)「あとこれくらいしか、いないんですよ」

ただ、陸上養殖は共済の補償を受けることができないため、ヒラメの被害を丸抱えしなければならない苦しい状況に陥っています。

(木野雄貴さん)「大分県は養殖ヒラメの生産量日本一ということもあるので、自分たちみたいな後継者が事業を継続できるように国や県が支援してほしい」


自然の猛威に晒されて大打撃を受けている佐伯市蒲江の水産業。全国に誇る養殖技術が存続の危機に立たされています。