子どもから大人まで100人を超える人たちが通う卓球教室が、おととし長崎市にオープンしました。
指導者はかつて高校の卓球部を7度もインターハイに導いた名監督です。
教壇を離れて教室を開いたのにはある理由がありました。
■ 教師を辞めて選んだ道
指導する角井さん「体ばらばらにならんよ~良い打ち方になってきたな。いいぞ」

長崎市にある卓球教室T―cubeの代表を務める角井 賢さん(44)です。
教室はおととし4月にオープンし、今では子どもから大人まで120人以上の生徒が通っています。

受講生「(教え方が)上手ですね」「対応も非常に丁寧で、毎日楽しみにしてきてます」

受講生「遠慮なしに大切なことを言ってくれるのでわかりやすいです。優しくて一生懸命指導してくれる」


実は角井さん、教室を開く直前まで、長崎女子商業高校の数学の教師で、卓球部の監督を務めていました。
T―cube 角井 賢さん「高校の教員やってるときは自分の学校の子たちに教えるっていうのが、自分の仕事だったんですけど、全国の指導者から、すごく良くしていただいて、いろんな知識を教えていただいたんで、そのことを一部の選手、子どもたちだけに伝えるのが非常に何か勿体ないのかなと」

監督時代はチームを7度もインターハイに導いた角井さん。2014年の長崎国体では成年女子チームの監督にも抜擢され、見事、優勝を果たしました。
その実績をもとに指導にも熱が入ります。

指導する角井さん「だめ、ミスが多すぎる。全部ノーミスで!今の1本のミスが、団体戦、全国で1位、優勝するかしないかに関わってくるんじゃないの?わかる?絶対1本もミスしないつもりでしっかり打って。いい?」
角井さん「この子たちは今、小学生なんで、まだ中学があり、高校があり、また大学・社会人があるって考えると、すごく未来があるんで。本当どこまで伸びるかなっていう期待がちょっと今まで以上に違うかなと」

角井さんが教室を開いたのは42歳の時です。
教師としても部活の指導者としても”脂がのってきた”頃でしたが、それでも学校を去ったのには『ある理由』がありました。

長崎市内で唯一の卓球用品専門店 宝スポーツです。
50年以上続くこの店は角井さんの妻・朋美さんの両親が始めました。

大学時代、卓球部だった角井さんはこの店でアルバイトを始め、のちに朋美さんと結婚。

およそ20年前に朋美さんの父親が亡くなってからは、母・重子さんが店を切り盛りしてきました。
しかし重子さんも80歳近くになり、角井さんが店を手伝う決心をしたのです。
角井さん「最初はあんまりそこまで深くは考えてなくて、家内がスポーツ店の娘であることを考えたときに、すごくいいご縁をいただいたなって思って。教員を辞めることよりも、『お店を手伝う』っていう気持ちがすごく強かった」

学校を訪ねる角井さん「今日はユニフォームの採寸の方とラケット関係少し持って来させてもらいました」

この日、角井さんが訪れたのは、中学校の練習場です。
店の商品を持って学校を回る“外回り営業”は角井さんの仕事です。
角井さん「やっぱり自分でちゃんと稼いで家族を養うっていうことが、どんなに大変なことかっていうのをひしひしと感じてるし、やっぱりサラリーマンと自営の違いっていうことを、今すごく感じてます」