住吉 光キャスター(以下 住吉)
長崎の暮らし経済ウイークリーオピニオン。平家 達史 NBC論説委員とお伝えします。
平家 達史 NBC論説委員(以下 平家)
よろしくお願いします、今日のテーマはこちらです。

 五島が国内最先端?海洋再生可能エネルギー

地球温暖化や脱炭素の流れから注目される”再生可能エネルギー”ですが、7日、閣議決定された政府の『骨太の方針2022』においても『グリーントランスフォーメーション(GX)への投資』という項目があり「脱炭素に向けたロードマップを年内に取りまとめる」と謳われています。

こうした中、”海”に関する国内でも有数の取り組みが五島市で進んでいます。

■ 海に浮かべた風力発電機

住吉:
再生可能エネルギーというと、『太陽光や風力』など『繰り返し使えて、二酸化炭素を排出しないエネルギー』ですよね。
五島市ではどんな取り組みが進められているのでしょうか?
平家:
一つが『浮体式 洋上風力発電』もう一つが『潮流発電』です。
洋上風力発電は、陸上よりも強い海上の風を利用する方法で、潮流発電は海中の潮の流れを利用する方法です。

住吉:
これらの事業が国内でも五島市で進められているのには、何か理由があるのでしょうか?
平家:
一言でいうと、いずれも五島の環境が発電に適しているためです。
まずは『浮体式 洋上風力発電』です。

浮体式洋上風力発電施設

五島市崎山地区から約5キロの沖合に浮かぶ『浮体式 洋上風力発電施設』
2011年から5年間の実証実験を経て、現在、五島市の家庭などへ電気を供給しています。
最大出力は一般家庭 1,800世帯分にあたる 2,000キロワットで、戸田建設などが出資する五島フローティングウィンドファーム合同会社が運用しています。

戸田建設 戦略事業推進室 牛上 敬 五島PJ推進部長:
「海域選定という形で作業が行われたんですけれども、風が強いということと、海の深さも必要だというところで、いくつか当たったなかで五島市を選定しております」


海底に支柱を立てるのではなく、海に浮かべてチェーンとアンカーで固定する”浮体式”は、環境への負荷が少なく、安定的に発電できるのがメリットとされています。
また、海中では魚などが集まる『魚礁』の役割を果たすことから、地元の漁業者にも歓迎されています。

いまはまだ1基ですが、今後は8基に増やし、2024年1月から商業運転を開始する計画です。
事業の拡大は地域経済への波及効果も期待されています。

牛上 部長:
「海に浮かぶ部分の建造とかは、なるべく長崎の地元で作ろうということで、コンクリートだったり鉄ですね、長崎は造船の技術が高く、工場もたくさんありますので」

また、施設のメンテナンスに地元の企業や船を使う計画もあり、合同会社では地域との連携を深めながら事業を進めていくことにしています。

牛上 部長:
「この事業が他の洋上風力の普及に貢献する足跡となれればと思っています。再生可能エネルギーの比率が上がっていって、自給自足のエネルギーとして日本の産業に貢献したいなと思っております」

平家:
工事や原材料の地元調達による経済効果も大きいんですが、加えてこれらの発電施設は、定期的な "保守・点検" が必要ですので、それにより "新たな需要や雇用" が生まれ『地域経済や人口減少対策へのプラス効果』が期待できます。

また現在は、原油や天然ガスなどのエネルギー資源価格そのものの高騰に加え、輸送コストの増加や、円安の影響で火力発電に使う石炭やガスの価格が上がって電気代も高くなっています。
ですが、このように地域でエネルギーが自給自足できるようになると、電気の安定供給と価格の安定にもつながるかもしれません。