■春先に起きやすい「あびき」とは


こちらは2019年3月21日に、長崎市で起きた道路冠水の様子です。午後8時半ごろに「あびき」が発生し、30分間で1メートル以上海面が上昇しました。


「大潮」「満潮」「あびき」が重なったことから、長崎市内の繁華街でも広い範囲で浸水被害が出ました。
長崎湾特有の「あびき」で、過去には係留していた船が流されるなどの被害も発生しています。


ちなみに「あびき」の語源は、速い流れのため魚網が流される「網引き」に由来するといわれています。
■「あびき」のメカニズム
あびきは東シナ海の大陸棚上で発生した気象現象の擾乱(前線や低気圧の通過など)による気圧の急激な変化によって引き起こされると考えられています。
大陸棚で発生した波が海底の地形などの影響を受けて増幅し、さらに長崎湾内で波が共鳴して増幅すると、湾の奥では1メートルを超す上下振動になることがあります。
気象台の統計によると、あびきの発生が多くなるのは2月から3月(3月は全体の約半数)となっています。
気象台では春にかけて大きな「あびき」が発生しやすい時期を迎えるとして、海面の変動に注意を呼びかけています。