3年連続で中止となった長崎市諏訪神社の秋の大祭「長崎くんち」の奉納踊。国指定重要無形民俗文化財に指定されていて、開催時期は多くの観光客で賑わいます。
延期は、新型コロナの感染がまん延したことが主な理由とされていますが、一方で、諏訪神社ではセクハラ・パワハラを巡って3件の裁判が起こされ、来年以降の奉納踊の実施にも影を落としています。
一連の裁判でのそれぞれの主張や動きなどをシリーズでまとめます。

■ 宮司が”名誉棄損”で提訴

今月9日、長崎県長崎市にある諏訪神社の宮司は宮司からセクハラ被害を受けたとして、ことし1月に裁判を起こした女性職員と部下である禰宜2人に対し『名誉を傷つけられた』として、300万円の損害賠償と謝罪広告を求める訴えを長崎地裁に起こしました。
訴状によりますと、被告の女性職員と禰宜2人は女性職員の証言を元に「宮司が女性を抱き寄せキスをしようとした」などとする ”虚偽の情報” を世間に広めた行為が、宮司の社会的地位を低下させたとして名誉棄損に当たるとしています。

宮司の代理人:
「虚偽の事実が公表されて宮司の名誉と諏訪神社の名誉が侵害されている。”諏訪神社を巡る問題が正常化する” ことを目的に、今回裁判を起こしております」

■ 神社の責任役員が ”セクハラ”で宮司の辞職を求める

一連の問題の発端となったのは2021年10月、諏訪神社の責任役員側の代理人による会見でした。
会見では2021年8月、宮司が女性職員に対し、握手やキスを求めるなどのセクハラ行為をした疑いがあることから、宮司に対し辞職するよう求めていることが明らかにされ、後日、禰宜らが『宮司にセクハラ問題について聞き取りを行った際の録音データ』が関係者を通じてマスコミや氏子らに公開されました。

宮司側の代理人によりますと、その録音データの中で、禰宜らは女性職員が受けた被害として──
「握手を強要され、その後、”抱き寄せられ”た上に、マスクをはがされる等しながら、キスを求められた」と読み上げています。

■ ”抱き寄せた”虚偽の公表で 名誉を棄損

一方で、ことし1月女性職員が宮司を訴えた際の訴状では「テーブルをはさんで立っている状態で宮司から握手を求められ、右手を差し出したところ思い切り ”引き寄せられ”て、マスクをはがされそうになりキスをされそうになった」となっていて、主張が当初の「抱き寄せられた」から「引き寄せられた」に変化しているといいます。

宮司側の代理人が、女性職員側に事実関係を聞いたところ、禰宜の聞き取りに対し「抱き寄せられた」とは言っていないと話しているということで、宮司側の代理人は禰宜らにより『虚偽の情報』が公表されたことで、宮司が女性職員を『抱き寄せた』とする印象を世間に与えたと指摘しています。

宮司側の代理人:
「”抱き寄せた” のであれば、強制わいせつの既遂。本当であれば(宮司の職を)辞任して当然。女性からちゃんと正確に聞き取ったということで読み上げ、録音し、それをマスコミ、氏子に流してるから、その時点で明白に名誉毀損である」

また、宮司側は、女性職員へのセクハラ疑惑に関しても「セクハラと取られかねない行為があったことは認める」とした一方で、実際の行為は「縦幅85センチのテーブルをはさんで両者が立って、握手」だったと主張。セクハラの事実はなかったと裁判で真っ向から争う構えを見せています。
このほかにも諏訪神社では、日常的なパワハラがあったとして、去年11月、権禰宜7人が、上司である2人の禰宜を訴えた裁判も係争中で、宮司側の代理人だけでなく、市民からも『諏訪神社の早期の正常化』を求める声があがっています。