15年にわたる献身的な介護を続けた夫の思いとは…
日南市に住む井野畑 青己(あおき)さん。
2020年9月、妻の淳(じゅん)さんを難病の「ハンチントン病」で亡くしました。

ハンチントン病とは、脳の神経細胞の一部が徐々に失われ、死に至る病。
治療法はなく、国内では100万人に数人というまれな病気です。
そんな病気が分かったのは、2人が結婚を考え始めた頃でした。

「『なんでこんなところで、ちょっとふらついたりするのかな』っていう、病気のことを勉強した後に考えてみれば、これが初期症状だなっていうのはわかるくらい。『ハンチントン病』っていう音の響き。ちょっと正直笑ってしまったんですけど」
ハンチントン病の特徴は、勝手に手足が動く不随意運動。やがて、立つことも座ることもできなくなり、寝たきりの状態になります。

(井野畑青己さん)
「妻はどうしたいのかっていうのを改めて聞いて。私と一緒にいたいって言ってくれたんで、妻がそこまではっきり自分の気持ちを言ってくれるんであれば、病気と妻に対する気持ちを天秤にかけた時に、『妻のそばにいてあげたいな。妻を一番近くで看取ってあげたいな』って。決めたのはその時ですね」

この病気は、自分では止められない不随意運動により、ベッドの柵などでケガをすることもあるため、通常の介護では望ましくないとされる身体拘束が必要でした。

「そういう事故がおきるかもしれないっていうことを、誰も教えていただけなかったので、
そういうのを、一つ一つ、自分たちで経験して、対策を自分たちで考えないといけなかった
っていうのが私たちの介護でしたね」
病気が進み、自力歩行が出来なくなり、飲み込みも困難になった淳さん。
しかし、当時、30代だったため、介護保険は利用できず、費用面の負担も大きくのしかかりました。
2人が目標とした「出来る限り自宅で」をかなえるため、訪問診療を活用しながら、食事やオムツ交換など日々の介護は、青己さんが担いました。