そもそも“アレ”はいつ誕生したか?
ところで、あんこが入った丸い食べ物 の代表的呼称である「今川焼き」「大判焼き」「回転焼き」がいつ頃生まれたかは、あまりはっきりしていません。
ただ、明治時代から大正、昭和の戦前まで最もよく使われた、日本で初めての近代的な国語辞典である大槻文彦の『言海』に載っているのが「今川焼き」だけであることからも、「今川焼き」が最も古い呼び方だろうと考えられています。『言海』には…
「〔東京、今川橋ニ始マル〕銅版ニごまのあぶらヲ延(ひ)キ、銅ノ輪ヲ載セ、 うどんこヲ水ニ溶(とか)シタルヲ注ギ入レ、餡ヲ包ミ、打返シテ炙(や)キタルモノ」…とあります。

「今川焼き」は江戸時代の 1800 年頃から昭和初期まで「たちまち焼ける今川焼き」の宣伝文句とともに広まったと言われます。明治以降の小説、樋口一葉の『大つごもり』や夏目漱石の『野分』にも「今川焼き」が登場しています。
しかし、「今川焼き」の「今川」が何なのか分かりにくいこともあって、その後に生まれた呼び名の愛媛県松山市発祥との説がある「大判焼き」や大阪発祥とされる「回転焼き」が、形や製法が思い浮かべやすいこともあって分布を広げたようです。