福井県の海水浴場で16日、野生のイルカにぶつかられたり、かみつかれたりして男性4人が重軽傷を負いました。このイルカですが、以前は石川県の沿岸で目撃された個体の可能性が浮かび上がっています。

16日、福井県美浜町にある水晶浜海水浴場に野生のイルカが現れ、60代男性がろっ骨を折るなど、4人がけがをしました。北陸放送が取材した17日にもイルカが出没し、男性が腕をかまれました。

この人に襲いかかるイルカですが、実は石川県の沿岸にいた個体なのではないか。こう話すのは、2020年から「すずちゃん」の愛称でイルカをかわいがっていた石川県珠洲市の出村正幸さんです。

「背びれの後ろに向かって、ちょっとした2~3か所の欠け具合がある。あれは間違いなく“すずちゃん”」(出村さん)

出村さんが珠洲市で撮影した映像と、美浜町で撮影した映像を見比べると、背びれにある特徴的な切れ込みが一致しているのが分かります。

出村さんによりますと、イルカが珠洲市にいた頃は、浅瀬にいる子どもに近づいても襲いかかることはありませんでした。

「“すずちゃん”は人懐っこい、人が大好き。人がいる所に寄って来る、集まってくる。全く害を及ぼすこともなく、触られても抱き着かれても無抵抗で、子どもたち・大人も含め人気者だった」(出村さん)

ところが去年以降、“すずちゃん”は福井の海岸に出没するようになり、腕をかまれるなどの事故も発生するようになりました。

「遊びたい、かまってほしいという気持ちで、ちょっとしたちょっかいを出しているのが、人間からすれば野生の生物が、200~300キロあるような筋肉の塊が向かってこられると、人間がけがをしてしまう」(出村さん)

出村さんは、人が多い海水浴場でイルカも興奮しているのではないかと話し、ぜひ穏やかな珠洲に戻ってきてほしいと話します。

事故があった水晶浜は、海水浴場の閉鎖も検討していましたが、閉鎖しても訪れる海水浴客の安全が確保できないとして、地元の観光協会などは20日、安全対策を強化して今後も開設していくことを決めました。