「たにんごと」が広がったワケ

それぞれの人の語彙力の問題で、「ひとごと」という言い方を知っているかどうかなのですが、「たにんごと」の方が「他人の事」ということで、「ひとごと」よりも意味がわかりやすいことが「たにんごと」が多くなっている理由と思われます。

「ひとごと」を伝統的な形として推奨し「たにんごと」は本来誤用であると指摘しつつも、「たにんごと」を誤りとされない程度に使う人が増えてきている現状があります。

日本語の専門家としては、「たにんごと」という人が多数派になりかけていることは認めつつも、「たにんごと」を使っている皆さんには、本来は「ひとごと」という言い方であるということを、この機会に知っていただければと思います。

◆加藤和夫氏 福井県生まれ。言語学者。金沢大学名誉教授。北陸の方言について長年研究。方言や日本語に関する様々な話題を発信している。(2023年1月10日 MROラジオ「あさダッシュ!」 から)

参考:NHK第1458回放送用語委員会(東京)2022年6月3日「語形・文法関連事項・各種表記について」、『放送研究と調査』2022年9月号、NHK出版