2人のもう一つの顔。それは、起業家です。
珠洲市飯田町にある「OKNO to Bridge(オクノトブリッジ)」会員向けに24時間開放されるこちらのコワーキングスペースが、2人の活動拠点です。

お揃いの手作りパーカーに書かれていたのは、「焼塩エイミー」。
長野出身・北村優斗さん(22)
「会社の名前です。去年の夏にアルバイトしてた飲食店があるんですけど、そこで出会った方の名前の組み合わせ。その人のおかげで珠洲を好きになったので、会社名で、原点として表現したかった」

北村さんが代表を務める焼塩エイミーは、今月11日に設立されたばかり。事業コンセプトは、かなり独創的です。
福井出身・笠原美怜さん(20)
「『ばあちゃんカンパニー』なんですけど。奥能登のおばあちゃんの個性を開拓して、それを世に解き放つっていう」
過疎化が進む奥能登で、お年寄り達を巻き込んだ、新たな事業への挑戦。地震の直後から、炊き出しなどで能登を度々訪れていたという北村さんは、外の視点から見る奥能登は多くの可能性を秘めていると、目を輝かせます。

長野出身・北村優斗さん(22)
「おじいちゃん・おばあちゃんというのは、今までずっとこの土地を守ってきた人でもあるし。今まで能登の人達にとって当たり前にやってきたことが、都会や他の地域で見たら『何それ』みたいなこといっぱいあるので。そういうものを外から来たからこそわかるような目線で少し発信したり、商品として外に出すとかしたい」
一方、輪島市内の高校に通っていた笠原さん。卒業後は九州の大学に進学したものの、地震をきっかけに、大学を休学して能登に戻ることを決めました。

福井出身・笠原美怜さん(20)
「輪島の友達とか先生が被災して生活が大変というのを北九州で聞いたときに、自分も力になりたいというのはずっとあって。皆さんの心が少しでも楽になったらそれでいいのかなというので、来ちゃいました」
長野出身・北村優斗さん(22)
「でも俺、味噌汁作りたいんだよな…豆腐とかナス、みたいなのを『ヒロコ』とか『マサコ』とかばあちゃんの名前と顔がのってて、その人の味の味噌汁が飲めるみたいな。そんな味噌汁セットみたいなものがあったら、ばあちゃんの味噌汁ってめっちゃく飲みたくなるなと思って」

次々と出る斬新なアイデア。その源泉は…。
仮設住宅にて 北村優斗さん
「お母さん。なんでこれ、石積んどるん」
住民
「これ(押し車)が軽いから石置かんかったらばぁばの言うこと聞かんのや!」「あはは」
地域のおじいちゃん、おばあちゃんたちとの交流。仮設住宅や集落をくまなくまわる移動販売は、その土地の特性や風習を把握するのに、うってつけだと話します。

福井出身・笠原美怜さん(20)
「どこのお宅が買ってくれるかをメモって、3人で共有してるんですけど。それをもとに『今週も来ました』とか言って…」
週に1回の訪問にもかかわらず、2人が来ると、住民たちからは笑顔が溢れます。
仮設住宅に住む男性
「心配な子、2人もこの田舎に来てくれて嬉しいけど。この子らの将来を考えると、本当にそれでいいのかな~みたいな」

長野出身・北村優斗さん(22)
「いやいや、お世話してくださいよ」
仮設住宅に住む女性
「考えについていけないこともあるけど、若い子がおれば楽しいよね」
地震と豪雨による二重災害で、人口流出に歯止めがかからない被災地。その地に希望を見出した若者たちが、今、奥能登の未来を動かそうとしています。

福井出身・笠原美怜さん(20)
「地震が起きて、悲しい町とか言うよりも『あの町すごく明るいよね』とか、『ワクワクしてるよね』とか『人もすごく良いよね』っていう、元々持ってた珠洲の素晴らしさをもっと引き出しつつ、マイナスのイメージからプラスのイメージに変えていくというのは会社としてやっていく」

長野出身・北村優斗さん(22)
「僕らも、外から入ってきた側なので、その方々が今まで培ってきたものを無理に壊すとか無理に変えるっていう形じゃなくて。色んな話を聞いたり勉強した上で、その価値を今後の未来に繋がるような形でアレンジしていくというか、少し新しい形に変えていくことができればと」