からふるでは今週SDGsウィークとして未来の地球、未来の子どもたちのためにできることを様々な角度からお伝えします。17日は医療的ケアが必要な子どもたちとその家族のキャンプ体験。共生社会の実現を目指した取り組みです。

11月8日、高知県四万十町にあるスカイヒルグランピング四万十の星空。楽しそうな様子で集まってくる子どもたちがいます。

豊かな緑が広がり、ゆったりとした時間が流れるこの場所で行われたのは、医療的ケアが必要な子どもたちやその家族のためのキャンプ体験です。高知市で重症児デイサービスを行っているNPO法人みらい予想図が企画しました。

(NPO法人みらい予想図 山﨑理恵 理事長)
「(家族内に)医療的ケアが重い方がいらっしゃると、家族みんなでどこかに旅行したり、キャンプなどの野外活動をしたりすることはすごくハードルがある。とにかく今までできなかった経験をしてもらいたい」

みらい予想図に通う子どもたちとその家族、11組が参加しました。

5歳の宮森葵士くんの家族もそのうちの一組。葵士くんは染色体異常で生まれつき呼吸や飲食がうまく出来ず、生後4か月の頃から鼻から管で栄養を補給する経管栄養を行っています。

気管切開をした今は、たんの吸引を行う医療的ケアが必要で、家族はこれまで、両親の実家に帰省する以外、旅行という旅行はしたことがありません。

(葵士くんの母 宮森莉菜さん)
「(経管栄養を)つるして、ボトルで注入したいのが一番なんですけど、普通に行ってもフックかけていい高さのところがない。飛行機で行くとなっても葵士はどうやって連れて行ったらいいんやろうって」

医療機器を持っての移動やサポート体制の不安、そして、公の場での周りの目という外出時の大きなハードルは、医療的ケア児や重度な障がいがある子どもがいる多くの家族が抱えています。

厚労省によりますと医療的ケア児がいる家族の96.8%が「旅行などをしたい」と回答する一方、そのうち、問題なく行えているのは17.2%にとどまっています。

こうした家族の願いを叶えようと初めて企画されたキャンプ体験ではきょうだいの思い出作りも大きな目的の一つです。

大学生のボランティアも参加していて、宝探しや人形劇など様々な催しが行われ、医療的ケア児や重度の障がいがある子どもたちのきょうだいが楽しい時間を過ごしました。

葵士くんのお兄ちゃん、登万くん(7)も楽しい思い出ができたようです。

きょうだいが楽しむイベントが行われている間、葵士くんはお風呂に入っていました。いつもは、両親の介助で入るお風呂ですが、この日は、お兄ちゃん、そして妹との時間を過ごしてもらおうと、資格を持ったスタッフが代わりました。

(葵士くんの父 宮森仁志さん)
「首はなんとかなりましたか」

(スタッフ)
「なんとかなった、ラップで(守った)。全然ぬれてないろ」
「(大学生に)お風呂上りに拭いてもらいました」

(葵士くんの母 宮森莉菜さん)
「よかったね、あおくん。助かる」

(葵士くんの父 宮森仁志さん)
「こんなに手が空くことないもんね」

(葵士くんの母 宮森莉菜さん)
「ほら見て、登万とののちゃん(葵士くんの妹)が(作った)」

晩ごはんは、バーベキュー。子育てのこと。介助のこと。いろんな悩みも共有できました。

(参加した保護者)
「同じような環境の子たちもいるので、気兼ねなく過ごせるのがいいかなと思う」

(医療的ケア児のきょうだい)
「めいちゃん見て、星」
「家族で一緒に楽しめて楽しかった」

(参加した保護者)
「(旅行に)なかなか連れて行ってあげることが難しいので、みんなで来られるのってありがたいなと思った」

参加した家族の笑顔に企画した山﨑理恵さんは。

(NPO法人みらい予想図 山﨑理恵 理事長)
「パパ同士ママ同士がゆっくり歓談していた。それは当事者の子どもや兄弟を見てくれている環境があるから安心して団らんされていると思う。無理だろうって思うこともこうやっていろいろな方の力をかりるとできることが証明された気がする。だからハードルっていうのは、実はないハードルなのかもしれないっていうのは今回わかったのでどんどん挑戦していきたい」

普段、なかなかできないという外出や旅行ですが、社会全体が医療的ケア児や家族のことを知っていれば、何かが変わるかもしれません。そんな兆しを感じ、家族のかけがえのない思い出が増えたキャンプ体験でした。