
ミュージカル=「ジョンマイラブ」はアメリカで体感した「自由と平等」を夢見て奔走するジョン万次郎こと中浜万次郎と、その妻“鉄”との出会いをはじめ、黒船来航で揺れ動く幕末の時代に仲間たちとともに懸命に立ち向かう姿を描いた物語です。鉄役はアイドルグループのAKB48の複数のメンバーが担っていて、万次郎役は役者の挽田悠誠(ひきた・ゆうせい)さんが務めています。先月、県内で初めて万次郎のふるさと土佐清水市で上演されました。舞台ではミュージカルならではの臨場感のあるリズミカルなダンスも披露されます。


この舞台の脚本などを手がけたのは劇作家の横内謙介さんです。横内さんは東京で40年以上、演劇に携わり、これまでに市川猿之助さんが出演するスーパー歌舞伎など、数々の舞台を上演してきました。横内さんは万次郎の歴史や資料などを調べる中で『万次郎の本当の価値』について『作家としての気づき』があったといいます。

(劇作家 横内謙介さん)
「江戸時代っていうのは思えば、ジョンが求めたもの全てが禁じられていた。身分社会で自由なんて認められていない。ジョンのやったことは本当に時代を変えようと確信、使命を持って(アメリカから)帰ってきた。単なる懐かしさだけじゃできるはずない。今回やるにあたってそこに気づいたことは、作家として僕なりに興奮できることだった。漂流を描かないでジョン万次郎を描くことは、ジョン万次郎の物語にとって真実はこっちにあるんじゃないか」
脚本を手掛ける中で横内さんは歴史の表舞台に出てこない万次郎の“あること”に特にこだわったといいます。

(劇作家 横内謙介さん)
「”鉄”との恋。鉄さんはジョン万次郎の物語の中に出てこない。調べるうちに最初の結婚は鉄さん。剣術道場の娘で名前が“鉄”。これは何事だと思っていろいろ探して、そんなに実際記録はない。でもジョン万次郎の最初の嫁ってことは、アメリカ式の暮らしだとか考え方を一番身近で感じたのは奥さん」
去年9月に愛媛でスタートし、1年以上上演が続く「ジョンマイラブ」。出演するメンバーたちはコロナの影響による舞台の休演などで苦しい思いを経験しますが、万次郎の“ある言葉”に支えられたといいます。

(劇作家 横内謙介さん)
「本当にコロナにひどい目に遭った。やるべき稽古が何度も延びて、本当に間に合うんだろうかって局面。見てもらえるはずだった人たちが見てもらえなくなる、公演を休むことが何度も起きた。我々も本当に漂流しているなって。ジョン万次郎が“Nevergiveup”(諦めない)って言葉を最初に広めたらしいんだけど、そういう人物を描いているんだってことで、力を貰った部分もあると思う」
ミュージカルのラストは出演者たちによる合唱が行われ、会場一体が感動に包まれます。

(観客)
「よかったです。全然知らないジョン万次郎のことが知れて、感激しています」
「帰ってきてからのジョン万次郎に(焦点を)あてたのはとても面白くてびっくり。感動です」
「(ジョン万次郎の)その周りに関わる人たちのことが知れて、すごく良かった。この時勢、周りと意見を合わせないといけない中、ジョン万次郎は自分の意志を貫いたところがすばらしいし、取り入れていけられたら」
最後に、横内さんが舞台に込めた思いを聞きました。
(劇作家 横内謙介さん)
「万次郎を思えば、きっと何か新しいことを見つけたり、自分の使命みたいなものを見つけ出せるんじゃないかな。そういう手本として、今も万次郎が生きている気がする。海を見たときに果てしなく遠いなって感じるか、いや、この向こうに何かがあるっていうふうに伝えられたらいい」

(万次郎)
「土佐の子どもたちに語ってやろう。足摺の岬から見えるその海の果てに何があるのか」

(鉄)
「そうです。お前らの海は世界につながっとるんじゃ」
(万次郎・鉄)
「諦めちゃいかんぜよ」
