青少年時代を高知で過ごした物理学者で随筆家の寺田寅彦が愛用した蓄音機が16年ぶりにメンテナンスされました。

寺田寅彦は東京で生まれ、幼少期から19歳まで高知で育った物理学者・随筆家で、「天災は忘れた頃にやってくる」という言葉を残すなど災害の研究にも尽力しました。県立文学館によりますと、この蓄音機は寺田寅彦の遺族が1990年代後半に県に寄贈したもので、長い間、メンテナンスされていなかったことから今回、依頼したということです。

(榎本優樹 アナウンサー)
「寺田寅彦が愛した蓄音機が、16年ぶりにメンテナンスされています」

製造から100年以上たった蓄音機。メンテナンスを行ったのは、静岡県在住で、蓄音機の修理などに50年以上携わる林靜雄(はやし・しずお)さんです。

(蓄音機修復師 林靜雄さん)
「状態は悪くないです。いいです。グリスもちゃんと前に(塗り)替えられて、良いグリスは使っているみたいです」

蓄音機は40歳の時に妻を亡くした寅彦が、4人の子どもたちの寂しさを紛らわせようと購入したものだといいます。

(県立文学館 川島禎子 学芸員)
「資料の保存と、それをどう使うかというバランスはとても難しい話だと思うんですけれども、蓄音機の場合は、その当時に鳴っていた音色を聞いていただくこともとても大事な事だと思うので、次の世代、またその次の世代と長く伝えていければと思います」

2028年は寺田寅彦の生誕150年の節目の年にあたり、県立文学館はメンテナンスされた蓄音機の音色を皆さんに聴いてもらえるよう今後、イベントなどを企画したいとしています。