実情を鑑みた判決
担当弁護士に、求刑通りだった罰金30万円の判決についての受け止めを聞いてみた。
「今回の判決は、いわゆる『満(みつ)るまで算入』と呼ばれるもので、身柄の拘束日数と引き換えに罰金の支払いを終えたとするもの。つまり判決の時点で刑を終えたことになる。実情を鑑みた判決だったのではないか」
男性の置かれた状況などを考慮した上で、社会復帰を見据えた場合に、今回の判決は、最適な着地点を探った結果であるといえるのかもしれない。
犯罪の“たね”は誰もが持っている
パンを万引きした男性は、他人とのコミュニケーションが苦手な“特性”が災いし、仕事を続けられず困窮に陥った末、犯罪に手を染めてしまった。「負の連鎖」から抜け出すことが難しい実情と、我々はどのように向き合っていけば良いのだろうか。
事件を通じ、多くの被告人と向き合ってきた男性の弁護士は…
「例えば他人とのコミュニケーションなど、程度の差はあれ、誰にでも苦手なことはあるだろう。見方を変えれば、それは、我々全員が犯罪の『たね』を持っているともいえる。ふとした拍子で『当事者』になってしまう可能性がある。とても大変なことだが…」
少し思案し、こう締めくくった。
「お互いの特性を受け止め合う。優しさを持つ。それが、お互いの成長に繋がり、社会の成熟に繋がる」