固定化される再犯者
「更生緊急保護を利用して施設に入ることは、本人の申し出があれば可能。重要なのは、施設を出たあとだ」
こう指摘するのは、制度を所管する法務省の担当者だ。
「近年は、施設を出た人を訪ねるフォローアップを行っている。話し相手になったり、生活の相談に乗ったりする。地域の繋がりが希薄になって久しいが、『孤独』と『孤立』が再犯を招く。『居場所』と『出番』を作り出すことを意識している」
法務省の「犯罪白書」によると、刑法犯の認知件数は、2002年の285万件をピークに減少を続けていて、2019年には74万件で戦後最少となった。一方で、更生緊急保護の利用者数は、2019年時点で、全国で約2,100人。ここ20年、ほぼ横ばいで推移している。考えられる背景のひとつに「再犯者の固定化」が挙げられるという。
「薬物や酒などに起因する犯罪に手を染めた後、施設に入所した人には、専門的なカウンセリングや教育プログラムを実施している。しかし、生活に困り盗みを働いた人に対しては、治療という考え方が取れないので…法務省としてできることは、就労支援ということになる」
男性の担当弁護士も、万引きなど「小さな犯罪」を繰り返してしまう人には、ある傾向が見られると話す。
「話し方や受け答えに違和感を覚えて、医師の診断を仰いだところ、発達障がいだと判明するケースはとても多い。他人とのコミュニケーションがうまく取れずに仕事を続けられず、困窮して犯罪に走ってしまう理由は障がいの影響だったのだと、逮捕されて初めて明らかになる」
ただ、それが裁判で考慮されることは無いという。
「発達障がいは、心神耗弱や心身喪失のように明文化されたものではないので、減刑の理由には一切ならない。むしろ、社会復帰後の支援などを主張する必要がある」