
事件の発生から約10か月経った2023年6月5日。宗武被告の裁判員裁判の初公判が、松山地裁で開かれた。
傍聴席は、ほぼ満席。大学生だろうか、若い人たちの姿も見える。
法廷に現れた宗武被告は、上下とも灰色のスウェット姿、スリッパを履いている。逮捕直後には長く見えた白髪交じりの頭は、刈り上げたように短く整えられていた。
検察官が起訴状を読み上げた。
「殺意を持って妻の首をタオルで強く締め付け、急性窒息による心停止後脳症により死亡させ、殺害した」
その後、裁判長が問い掛ける。
「検察官が読み上げた起訴状に間違いは?」
宗武被告は、はっきりとした口調で答えた。
「ありません」