
防疫の措置を経て鶏舎に再びニワトリが戻ったのが6月。かつてのおよそ1割、1万8000羽からの再スタートでした。
6月の再スタートにあわせ買い付けたニワトリ
(冨田さん・6月取材時)
「懐かしい音っていうか 元に戻るにはまだここから1年半、2年はかかるがそれでもスタートが切れた」
ニワトリが届いたあの日のことは、5か月が過ぎた今でも忘れられないといいます。
(冨田さん)「トリが入った日はみんなが帰ったあと1人で鶏舎で泣いた。最初の1個は大事に抱えて妻に持って帰ってあげた」

少しずつニワトリの数を増やし、今では1日におよそ4万5000個の卵を生産できるようになりました。
出荷作業をするのは、今治市にある直売所です。今は地元のスーパーの他松山や西条の飲食店に卵を届けています。自動販売機を備えたこの直売所は8月に再開しました。
(記者)「卵の値段は前と同じですか?」
(冨田さん)「そのままです」
物価の高騰でニワトリのエサ代は再開前の3倍になっていますが、あえて卵の値段は変えていません。
(冨田さん)「とりあえず来年ぐらいまで我慢して3月~4月ぐらいまではこのまま据え置きで受けた恩を返せたらいいかな」

客足も少しずつ戻ってきました。
(買い物客の女性)「生で卵かけご飯をするのにここのがいい」
(男性客)「ここの最高においしいですよ。ずっと待っていた」
冨田さんの妻、彩さん。今、仕事ができる喜びを感じています。
(彩さん)「『ありがとう、よかったね』って言ってくれるのが本当にうれしい」

(彩さん)
「本当はやめようと思っていたんです。主人も私ももうできないだろうなと思っていた。みんなが『負けられんがんばりよ』って言ってくれた」

絶望の淵にいた夫婦を救ったのは、2人の仕事を見てきた人たちでした。
(彩さん)「うれしかったね」
(冨田さん)「簡単に辞めるとは口に出せない」
店などへの出荷とあせて進めているのが、返礼品の発送です。
再スタートにあたりヒナの購入費をクラウドファンディングで募ったところ、5月から2か月ほどで800万円を超える資金が集まりました。

支援者へのお礼の品。中身はもちろん採れたての卵です。生産も安定し卵のサイズも揃ってきたので、11月から発送を始めました。
一方、不安もあります。