《漁師を悩ます漁業被害》

稚内市の漁師・吉田信久さんです。9月、自身のSNSにある写真を投稿しました。

定置網にかかったサケ。頭の部分がなかったり、エラの部分だけが食い荒らされたりする被害が続出しているのです。

サケの定置網漁師 吉田信久さん
「10年近く前からアザラシ食害はあったが、年々被害が大きくなってきている。さすがにここまで不漁で量がないと目立ってくるので投稿した」

ゴマフアザラシの仕業、いわゆる「トッカリ食い」と呼ばれる食害です。

定置網漁は、回遊するサケを海中に仕掛けた網に誘導して捕獲する漁法。

サケは障害物を見つけると沖に泳ぐ習性があるため、その習性を利用して網の奥へと誘います。

しかし、アザラシは「運動場」と呼ばれる最初の広い空間で、入って来るサケを待ち構えて食べてしまうと言います。

サケの定置網漁師 吉田信久さん
「(アザラシは)賢くなってきている。網の仕組みも全部理解しているし、最短距離で入って捕まえてから食べて逃げる。嘘みたいな話ですけど、そのくらい知能がある」

15日、ドローンで撮影した映像です。

定置網の中にいるアザラシが確認できました。網の中でサケを追い回しています。

漁師たちも、ただ指をくわえて見ているわけではありません。

サケの定置網漁師 吉田信久さん
「これが轟音玉。僕らは鉛を付けて沈めてポンと爆発させる」

動物を追い払う花火を試しましたが、効果は一時的なものでした。

過去には、アザラシの天敵・シャチの形をしたフロートを浮かべて、拡声器でシャチの鳴き声を繰り返し流してみたこともありました。

サケの定置網漁師 吉田信久さん
「1週間くらい効果があって、『効くね、効くね』と思っていたが、彼らも慣れて、それも全然効かなくなった」

ほかにも、アザラシが侵入できないように網の入口に鉄の柵を設置してみましたが、これも効果はありませんでした。

サケの定置網漁師 吉田信久さん
「網の仕組みも理解していて、年々賢くなってくる。ここまで不漁になった以上いろいろ漁業組合だったり、漁師同士で協力しあって対策を練ったほうがいい」

そもそも、なぜアザラシは、サケの頭を食い荒らすのでしょうか。

アザラシの生態に詳しい専門家は…。

東京農大(生物産業学) 小林万里教授
「大きなアザラシはサケを丸ごと飲み込む。これは飲み込めないと思った場合、エラ部分を噛んで振る。そうすると飛んでいく。サケだけが被害に遭い、最悪な事態。小さいアザラシは被害は起こすけど、サケは食べられていない」