医師不足に関する話題です。人口10万人あたりの医師の数を見てみると、愛知県・岐阜県・三重県はいずれも全国平均を大きく下回っています。新型コロナやインフルエンザで医療現場の負担が増える中、医師たちがどんな働き方をしているのか取材しました。

「県内になかなか定着してもらえない」全国平均を大きく下回っている三重県の医師数

三重県伊賀市の岡波総合病院は2020年、新型コロナが未知の病だった頃からいち早くコロナ患者を受け入れ、猪木理事長自ら診察を行ってきました。

(岡波総合病院・猪木達理事長)
「何の薬を使ったらいいか分からない。皆『やりたくない』という未知の感染症だったので、『それならぼくがコロナ専属になる』とコロナ患者を全て受け持つようになった」

三重県の民間病院では最多の30床を確保し、これまでに受け入れたコロナ患者は500人。現在、コロナの入院患者は4人。ほぼ満床だったピーク時に比べると、スタッフの負担は軽くなりました。

しかし、三重県の医療には医師不足という根本的な問題が存在しています。2020年の統計では、三重県は人口10万人当たりの医師の数が全国35位の231.6人。手術などで必要な麻酔科や、救急科・形成外科の医師の数は全国最下位です。

(三重県・医療介護人材科・中川耕次課長)
「県内になかなか定着してもらえないのが(医師不足の)一番の理由」

県内の医療機関で9年間勤務することを条件に、返済を免除する奨学金制度を設けるなどしていますが、それでも県外に出ていく学生も少なくなく、抜本的な解決策がないのが現状です。

大阪の大学を卒業後、研修医として岡波総合病院に来た医師に話を聞きました。

(研修医1年目・石原寿真医師)
「ぼくの代が(研修医が)2人。なかなか少ないなと感じた。人が足りなくてオペが入らなかったり」

県民にとって必要な医療が受けられない恐れもある深刻な医師不足。医療現場も過酷です。

「昼食も取らない」1日に複数の病院をハシゴして働くフリーランス医師の現状

朝8時、岡波総合病院に出勤してきたのは宮田和明医師。

(宮田和明医師)
「伊賀で10年くらい診させてもらっていますが、忙しいのはずっとですね」

糖尿病や高血圧などの生活習慣病から、心不全などの重い病気まで循環器内科に関する外来を担当しています。

診療風景を覗いてみると、朝9時から夕方5時までの間に席を立ったのはトイレとうがいのたった3回。「3時間待ちの3分診療」と、ひたすら待っても診察はすぐ終わると揶揄されることも少なくありません。それでも時間が足りない中で、宮田医師は1人1人と雑談することが病を見抜く鍵だと言います。

(宮田和明医師)
「ぼくの忙しさや事情は関係ないことですので。しっかり話を聞くことで納豆を食べていたことが分かって、薬の量を変えずいこうと」