叶わぬこととわかっていても…
「では、またね」
その言葉に嘘はなかったが、もう会える保証などどこにもなかった。
ターニャは、ロシアの西側にある隣国ウクライナへ。自分はロシアの東側にある日本へ向かうのだから。第二次世界大戦を経て、より国力を強め、西側諸国に対抗して、ソビエトを中心として東側諸国が共産圏を形成する中、会うことは難しかった。

一方、日本は、アメリカに占領され、GHQによる占領政治が敷かれ、西側諸国に与していたのだから。それでも「またね」と再び会う約束を取り交わした。それがお互いに叶わぬことだと分かっていても。