春男さんにも転機が…

当時のウクライナと言えば、ソビエト連邦の一角を担い、ロシアと兄弟とも言われるほど結びつきが強い国だった。その当時ロシアによる侵攻、圧政に屈したウクライナは、ロシアの西隣に位置する国。

一方で日本はロシアの東隣に位置する国で、どちらもロシアの力の前に屈し、翻弄されたという点では似ていた。

「あの時は、辛そうな顔をしていたなあ」

春男さんは、当時を振り返り、どこか寂しそうな表情を見せた。

しかし、ちょうどその頃、春男さんにも転機が訪れようとしていた。それは突然の出来事だった。

収容所の所長から前触れもなく「明日、日本へ帰れるから早く支度しなさい」と告げられたのだ。