戦後80年の終戦の日は、例年よりも数多くの戦争企画が放送され、他のメディアでも特集された。その終戦直前に日ソ中立条約を破り、日本を攻め、終戦の日を過ぎても進軍していたのがソ連だった。
1945年8月15日をもって日本軍は段階的に解散し、多くの若者が自由を手にしようとしていたが、そこから尚もシベリア抑留によって捕虜として自由を奪われた若者たちがいた。
その若者の一人が名古屋市に住む長澤春男さん(100)だった。

強制労働に耐えながら、独学でロシア語を学び、中隊長にまで昇進した彼は、ロシア人女性からプロポーズされた。これは敵国でもあったロシア人女性、クリスタル・ターニャとの禁断の恋のエピソードでもある。戦後80年、自身もこれまで80年間封印してきた逸話というが、本人の許しを得て、ここに解禁する。知られざるシベリア抑留体験記として。
ターニャの父親から、自分の娘と結婚してほしいと懇願されたが、春男さんの意思は固かった。
「私は日本へ帰りたい。日本人だから」
その答えを聞いた父親は「やはりそうか」と肩を落としたが、同時に春男らしいと呟いた。ターニャ自身も春男さんの選択に「ハルオらしいわ」と同調してくれたと記憶しているが、はっきりとは覚えていないという。むしろ、その後の展開が衝撃的で、そちらの記憶の方がより鮮明に残っていたからだ。










