「秘密をひとつ持つ人の方が、人生に“陰影”がある」

孫の莉莉から見れば、時子と道男の関係は、最初はすぐに受け止められるものではなかったかもしれません。

大好きだった祖母に、自分の知らない顔があった。

その事実に戸惑い、葛藤する莉莉の姿も、この映画の大きな軸になっています。

一方で竹下さんは、この作品に出演したことで、“秘密”というものへの見方が少し変わったといいます。

「どんな秘密であっても、それがある人と全くない人を比べた時に、秘密めいたものを一つでも持っている人の方が、人生に幅があるというか。陰影もあって、なんかいいような気がしてきました」

人には、誰にも話していないことがあります。

話せなかったこと。
話さなかったこと。
あるいは、心の中にそっとしまってきたこと。

それは、必ずしも後ろめたいものばかりではないのかもしれません。

誰かを思い続けた時間。
自分だけが知っている記憶。
生きてきた年月の中で、静かに積み重なった感情。

そうしたものが、その人の人生に“陰影”を与えていく。

竹下さんは、時子という女性を演じたことで「秘密も悪くないかな」と感じるようになったと話します。

「仲良しだけで人は繋がっているわけでもないし、そういったことを乗り越えた時に、また違う繋がりが生まれることもありますよね。そこでひとつ、人は前に進めるのかなと思いました」

秘密は、人を遠ざけるものではなく、時に、人と人との関係を見つめ直すきっかけにもなる。

時子の秘密は、莉莉にとって、祖母をもう一度知り直すための扉でもありました。