終戦後、巻口さんの父・栄一さんはシベリアに3年近く抑留され、日本に帰国。
残された母・シズさんは4人の子を抱え食料も底を尽きる中、現地の中国人に命を救われ、その妻となりました。

戦争によって引き裂かれ、離れ離れとなった家族…

母・シズさんの手記には、こう書かれています。
『自分の過去を考えると悔しくてなりません。けれど自分に与えられた運命と自覚しております』

現地に取り残された人たちの中には生き延びるために中国人と結婚した女性や、養子になった子どもが多くいたそうです。

シズさんが再び母国の土を踏んだのは1975年。
国策のため満州へと渡ってから、実に32年以上がたっていました。

7歳で満州へ渡った巻口弘さん(90)
「武器を持って力で人を圧して自分たちの有利な境遇を得たいなんていう、そんな考えは絶対にあっちゃならない。(子孫が)知らないことを言い伝えていく。残された今の自分の幸せを感じれば感じるほど、やっぱりじっとしていられませんよ」

柏崎市の高台にそびえる『満州柏崎村の塔』には、こう記されています。

『再びこの過ちは繰り返しません』

激動の時代に人生を翻弄された家族とその事実が、今を生きる私たちに戦争の悲惨さを訴えています。