この値上げの夏、家計にも地球にも優しく。いわゆる“ワケあり”の食品が驚きの安さになったり、全く別のモノに生まれ変わったりしています。広がる“食品ロス対策”を取材しました。

■“ワケあり商品”を格安販売 お客さん「嬉しい以外の何ものでもない」

神奈川県川崎市の大型商業施設「新百合ヶ丘エルミロード」では、あるイベントが行われていました。

お客さん
「これも買ってみようかな」「安い!」

皆さん商品に興味津々。それもそのはず。ぶり大根は56%オフの174円。さらに、お鍋のスープも69%オフで154円という驚きの安さです。

お客さん
「嬉しい以外の何ものでもないですね」

お得に商品を購入できる期間限定で行われているイベント「Kuradashi POPUP SHOP」(7月28日まで)。なぜこれだけ安く販売が出来るのかというと…

クラダシ経営戦略室室長 築地雄峰さん
「賞味期限がより短くなってしまった商品に関しては、よりお買い求めやすい価格でご提示しています」

イベントで販売されているのは賞味期限が近いものや、規格外といったいわゆる“ワケあり商品”なんです。レジに並んでいた男性は、49%オフのさばの塩焼きなどを購入。いつもの買い物では、同じ量で1000円は超えているといいますが…

お客さん
「安いです!850円」

予想より150円ほどお得に買い物ができました。

イベントを運営する「クラダシ」によると、7月18日までの4日間で約8500点の商品が売れていて、こうした“ワケあり商品”はオンラインショップでも購入できるということです。

クラダシ経営戦略室室長 築地雄峰さん
「フードロス削減という課題、極めて大きい課題になるので、よりこの活動を浸透させたい」

■パン店では“賞味期限延長”で廃棄ロスを削減

食品ロス削減に取り組む店は他にも。
東京・世田谷区の「YOUR OVEN」。米粉を使ったもちっとした生地が人気のピザや、焼きたてでふっくらした食感が特徴のエピなどの看板商品とともに、焼きたてのパンをマイナス35度で急速冷凍した「冷凍パン」が人気です。

YOUR OVENスタッフ 長谷川朋実さん
「パンは賞味期限が短くて、どうしても廃棄が発生してしまうので。冷凍パンにすることで(食品)ロスを限りなくゼロに抑えられる」

「冷凍パン」の賞味期限は長いもので約3か月。お店での廃棄を減らし、お客さんも好きなときに美味しいパンを食べられるため、どちらにとってもお得だといいます。

お客さん
「冷凍しておけば食べるときに出せばいいんだもん。便利でグーよ」
「食べたい分だけ温めて、温かいものが食べられるので得した気持ちになります」

このほか、冷凍したパンならでは…冷たくてもふっくらとおいしい冷んやりパン「パッション&オレンジ」(240円)も期間限定で販売しています。

YOUROVENスタッフ 長谷川朋実さん
「冷凍パンを用いることで製造コストの削減だったりとか、廃棄ロスを削減したりとか(社会に)貢献できればと思います」

■子どもの給食に出せない“パンの耳”がビールに?

そして、暑い日に飲みたくなるのがビール。黄金色に輝くビールも食品ロス対策に一役買っています。

北九州市にあるパンの製造会社では給食用のパンも作っていますが、ある問題を抱えているといいます。

クラウン製パン大型ライン部門 畑中康弘主任
「食パンの耳です」

福岡県では「食パンの耳」が子どもには「かたい」といった理由から給食用では提供しておらず、全て廃棄しているといいます。その量は多い日の場合100キロにもなるそうです。何とか捨てずに活用できないかと悩むなか、とある共通点を思いついたのです。

クラウン製パン 松岡寛樹常務取締役
「歴史をたどれば、パンとビールはすごく密接な関係がありますので…」

パンと同じ小麦の麦芽を使っている地ビールの会社に「パンの耳」を原料にできないか相談。およそ半年かけ、原料の1割をパンに替えた地ビール「ブレッドヴァイツェン」が完成しました。

クラウン製パン 松岡常務取締役
「苦味が出ると思ったんですが、全くそういうのがなくて、まろやかな味わいでおいしいです。いい製品に仕上げていただいて感謝しています」

食品ロスを少しでも減らしたいという思いから誕生した、廃棄パンを使ったビール「ブレッドヴァイツェン」(350ml 550円)。ネット通販でも購入できるということです。

お得に、そしてちょっとしたアイディアで行われている食品ロスの削減。こうした広がりは今後も続きそうです。