第52回全日本実業団ハーフマラソンが11日、山口市の維新百年記念公園陸上競技場を発着点とする21.0975kmのコースで行われる。女子では21歳の酒井美玖(肥後銀行)への期待が大きい。
昨年10月のプリンセス駅伝3区区間賞や、1月の全国都道府県対抗女子駅伝1区区間3位など、駅伝で活躍してきた選手。3年前の全国高校駅伝1区区間賞の走りも強烈だった。11km以上の距離のレースは初めてだが、ロードへの適性は高い。ハーフマラソンは初出場でも、酒井が中心の展開となることを予想する声も多い。

予想が難しいレース中の動き

レース前日の取材で酒井に目標を質問すると、「まずは楽しく走ることです」という答えが返ってきた。「楽しく」という言葉は、取材を進めていると何度も発せられた。酒井にとって意味のある言葉なのだ。

レース展開は「直前の練習もあまりできていないので、自分から動くことは考えていません」と話したが、動く可能性もあることは認めた。「第1集団に付いて走って、自分の感覚と体の状態を見て、行けると思ったら行こうと思います。後半を大事にしていきたいと思っています。15km以降を下見しましたが、体が動いて行けると思ったら、何km地点でも行きます」。

酒井が自ら動くのか、動かないのか。走り始めてみないとわからない。
小出優希コーチによれば、直前の宮古島合宿で予定していたポイント練習(週に2~3回行う負荷の大きい練習)が2回できず、「スタミナに不安がある」(同コーチ)のは事実のようだ。その一方で、レース2日前の1000mで練習中の自己新記録で走った。

1000mの自己新と聞くと体が軽い状態で、レースでも早めに飛び出す可能性を感じるが、前述のように酒井は「後半を大事にする」と言う。
「練習をしていても、たぶんアップ不足が原因なんですけど、前半の動きがすごく悪いんです。後半になるにつれて動きが良くなり、ペースも上がってくる。だから明日も後半は体が動いてくると思うんです」。

小出コーチは「最後の5kmのスプリットが一番速くなって欲しい」と話すが、その一方で「早めに動いて、その結果が失敗になってもいい」と考えている。
レース展開は予測がつかないが、酒井がレースを動かす能力がある選手であることは断言できる。そして小出コーチが言ったように、21歳の選択は、どういう結果になっても今後につながっていく。