今月6日、ゼレンスキー大統領は言った。
「無人機システムの軍の創設を始めるための命令に署名した」
ウクライナの無人機攻撃はすでに陸・海・空で威力を発揮し、戦線では劣勢が伝えられる中で着実に成果を上げている。一方、ロシアもAIを用いたドローンを投入しているという。
長期化が避けられないウクライナ戦争は互いにドローンを駆使した新たなフェーズに移ったようだ。ドローン戦争の実態を追った。

「標的をクリックすれば、あとは操作しなくても標的にたどり着くドローン」

番組では前線で活動するドローン部隊の司令官にインタビューした。
するとロシアがAIを搭載したドローンによる攻撃を始めていることがわかってきた。

独立無人機大隊 マジャル司令官
「(ここに)墜落した敵のドローンがある。このドローンには大きな爆発物が搭載されていた。手作りの工夫が施されている。ほら、洗濯ばさみのようなものがついているでしょ。これは中国産の部品で作られたドローンだ。私たちはこのドローンを阻止した。落下したが爆発しなかったのでこうして残っている。ちょっと壊れたけれど…。このようなドローンは必ず回収して分解。敵が何を使っているか調べるようにしている。敵も同じことをしてるだろうがね…」

現在のドローンの主流はFPVドローン。つまりFirst Person View(一人称視点)、ドローンから見える景色を見ながら操縦するもの。しかし、最近別のタイプのドローンを回収したとマジャル司令官は教えてくれた。

独立無人機大隊 マジャル司令官
画像認識を搭載したドローンで、初期型のAIを使ったものだ。操縦者はドローンを発射し戦地に向かわせ標的をクリックすれば、あとは操作しなくても標的にたどり着く。(中略)戦地にいる操縦士はFPVドローンの捜査に集中していると周りの脅威に気づかず危険だ。画像認識できるAIドローンが多量に使われるようになれば(操縦者の危険は減る、逆に敵に回せば)このようなドローンは危険だ。(中略)今後はウクライナもマシンビジョン(画像認識)AIを搭載したドローンを使っていく。ウクライナ国内ですでに開発されている。これは海外には頼れない」

発射して目標をクリックして設定すればあとは任せられるので、一人の操縦者で沢山のドローンを発射できることも大きなメリットだ。さらにAIドローンの脅威は、妨害電波によって操縦を阻止する電子戦装置を無力化することだと言うのは、ウクライナの軍事アナリストだ。

軍事アナリスト セルヒー・フレシュ氏
「ウクライナの電子戦装置の稼働範囲は50~100メートル程度なので、例えば200メートル離れた場所で標的をクリックされたドローンは(もう遠隔操作がいらないため)妨害電波が意味無くなってしまうのだ」

ドローンは大きくないため撃墜が難しい半面、搭載できる爆薬も少量なので破壊力は小さい。その弱点を補うのは“数”だ。つまり今後は量産がカギとなる。

英国王立防衛安全保障研究所 秋元千明 日本特別代表
「ウクライナは100万機を製造する計画。2023年は20万機しか作っていない。FPV自爆ドローンですけど今年は100万機作ろうとしている。アメリカの元グーグルCEOのエリック・シュミットが“ホワイトストーク計画”として、アメリカとウクライナに生産工場を作ってAIを搭載した最新型のドローンをどんどん作る。それも1機400ドルで作るって言ってる…」