東京五輪での“失格”―「パリではしっかりバトンを」
撮影場所は国立競技場。二人がこの場所に揃うのは東京五輪男子4×100m決勝で、バトンが渡らず日本が「途中棄権」となったあのレース以来だ。
山縣は「国立を僕たちにとっていい思い出にするためにも、パリではしっかりバトンを繋いで頑張りたい」。桐生は「リレーも含めてすべての大会で納得のいく結果を出していきたい」と意気込む。あの借りはパリ五輪でしか返せない―。二人ともに今シーズンは特別な想いで臨む。

これまで二人は、長期に渡って日本の短距離界をけん引してきた。2013年、織田幹夫記念の予選で、17歳の桐生が10秒01と9秒台に迫ると、決勝では山縣と100分の1秒差の接戦を演じ、桐生が10秒03(追い風参考記録)で優勝。その日を境に日本人初となる9秒台の期待を背負い、二人のライバル関係が陸上界を急激に盛り上げた。2016年リオ五輪の4×100mリレーでは日本の銀メダル獲得に貢献。その翌年に桐生が9秒台の扉をこじ開けると、2021年には山縣が日本新記録となる9秒95をマーク。9秒台を出した直後、TBSの取材に桐生は「山縣さんからの祝福メッセージが一番嬉しい」と話し、日本新記録を出した直後の山縣も「やっぱり桐生からのメッセージが一番嬉しい」と話した。
東京五輪終了後は、山縣が膝の手術で2022年シーズンを休養とリハビリに充て、桐生は2022年6月の日本選手権後、モチベーション低下を理由に休養を発表。そして去年、二人は再びトラックに帰ってきた。
勝負の2024年に向け、山縣は「パリ五輪はオリンピック4大会連続出場がかかっている。ケガとか色々ありましたけど、自己ベスト(日本新記録)を出して4回目を決められるように強い気持ちで臨みたい」と語り、桐生は「東京五輪は個人種目で出ることができなかった。その前のリオ五輪では納得のいく結果ではなかったので、パリ五輪ではいい結果を出したい」と熱い想いを話した。
10年間日本のトップを競ってきた永遠のライバル。二人そろって、リベンジのパリへ駆け出した―。