■第43回大阪国際女子マラソン(28日、大阪・ヤンマースタジアム長居発着)

パリ五輪代表選考を兼ねた大阪国際女子マラソンは、東京五輪代表の前田穂南(27・天満屋)が2時間18分59秒でゴールし、日本新記録の快挙を達成。日本人女子史上初の18分台を叩き出し、野口みずきが05年ベルリンマラソンでマークした2時間19分12秒を19年ぶりに更新した。

自己ベスト(2時間22分32秒、23年名古屋)を大幅に更新し、22年の名古屋で一山麻緒が出した国内レースでの日本人最高タイム(2時間20分29秒)も大きく塗り替えた。五輪選考の設定記録である2時間21分41秒もクリアし、五輪代表の「最後の1枠」に堂々と名乗りを上げた。

優勝はウォルケネシュ・エデサ(エチオピア)、タイムは2時間18分51秒。前田は8秒差で2位。昨年10月のMGCでは7位と結果を出せず悔しい思いをしたが、2大会連続の五輪出場へ大きく前進した。大阪国際は3戦3勝の松田瑞生(28)は折り返し地点から遅れ始め、2時間23分07秒の3位。佐藤早也伽(29)は5位でフィニッシュ。

スタート時は雲の多い晴れ、気温は9.3度と良好なコンディション。今大会、日本歴代2位(2時間19分24秒)の記録を持つ新谷仁美(35)らがペースメーカーを務める中、レースは序盤から1kmを3分20秒前後のタイムで刻み、前田、松田、佐藤が先頭集団で安定した走りをみせた。

最初の5kmは16分32秒、10kmは32分59秒で通過し、ゴール予想タイムは2時間19分10秒とハイペースで展開。15kmは49分33秒で通過し、前田、佐藤が新谷の後ろ、松田は新谷に並走する形でレースは進んだ。

中間地点を1時間9分46秒で過ぎると、前田がペースメーカーより少し前に出て最初に仕掛け、松田が集団から少し離れはじめる。25km地点で松田は100m以上離れてしまい、佐藤は新谷と並走を続け前田を追う。先頭の前田は縮まりかけた集団との差をさらに広げ、野口みずきの日本記録に迫る快走を続けた。

29kmを過ぎて少し雨が降り始め、佐藤がペースメーカーの集団から遅れる。前田は招待選手のウォルケネシュ・エデサ(エチオピア)が迫ってくる中、30kmは1時間38分36秒で通過。給水を取り損ねる場面もあったが、依然としてハイペースをキープ。31kmを過ぎてエデサに抜かれ2位になり、少し口が上がりはじめた。

勝負の終盤へ。先頭のエデサは35kmを1時間54分46秒で通過し、前田も10秒ほどの差で日本記録を上回るペースを維持。前田は35~36kmのラップも3分18秒とスピードを落とさず、粘りの走りで先頭のエデサを追う。40km手前ではエデサとの差も少し縮まり、40kmは2時間11分42秒で通過。41㎞付近では呼吸も荒く、時折、声も出始めたがペースは1㎞3分20秒をキープして、トップのエデサに迫った。

最後のスタジアム前では雨脚も強くなったが観衆の大きな声援に後押しされスタジアムに入った。大歓声で迎えられたスタジアムでは最後の力をふり絞り、サングラスを外し力走。見事2時間18分59秒でフィニッシュテープを切り、日本新記録を達成。2005年にベルリンマラソンでマークした野口みずきの2時間19分12秒を13秒上回る最高のレースとなった。

現在、パリ五輪内定者は昨年10月のMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)を制覇した鈴木優花(24・第一生命)と、2位の一山麻緒(26・資生堂)の2人。残りの1枠の争いは、今大会と3月10日の名古屋ウィメンズマラソンで設定記録(2時間21分41秒)を突破した最上位の選手。名古屋で前田を上回る新記録が出なければ前田が代表の座をつかむ。