10日間で最大8本のレースに出場する可能性がある。仮に6~7本になっても、超ハードスケジュールであることに変わりはない。昨年の東京五輪でも1500mと5000mの2種目に挑んだが、田中がここまで多種目挑戦にこだわるのはどうしてなのか。
日本選手権で内定した2種目に加え世界ランキングで800m出場も決定

田中は1500mと5000mは世界陸上参加標準記録を突破し、世界陸連が定めた出場資格を獲得していた。そして6月の日本選手権に両種目で優勝し、日本陸連が定めた選考基準(日本選手権3位以内)をクリアして代表に決定した。
800mは標準記録が1分59秒50と日本記録よりも高く設定されていた。だが1国3名カウントの世界ランキングでターゲットナンバー(800mは48人)に入れば、日本選手権は2位に入ったので代表入りできた。最終期限の6月26日時点では55位だったが、その後、辞退者が出て世界陸連から招待が届いた。
個人種目3種目の日本選手の出場は、戦前のオリンピックでは例があるが、1983年に始まった世界陸上では前例がない。それも中・長距離種目である。常識的に考えて体への負担が大きすぎる。
だが日本陸連から招待を受けるか打診をされ、田中は迷わず出場を受諾した。
「ほぼ毎日レースがあれば、結果が伴わなかったときにもすぐに“また次”とレースに出ないといけない。逃げずに自分と向き合うことができるんです。誰もやったことがない、ということもそうですが、種目が増えた方がチャレンジャーとして挑めます」
昨年の東京五輪でも1500mと5000mに出場した。5000mは惜しくも決勝に進めなかったが、1500mでは準決勝で3分59秒19の日本新をマークし8位入賞。

「1つの種目に集中してそこだけにピークを持っていくのが、スタイルとしてやりにくいのかもしれません。それぞれの種目を走ることで、それぞれが補い合える。オレゴンでは最初に1500mがあり、1500m(のスピード持久)を5000mに生かすことができそうです。5000m予選のあとに800mがあるのも、リフレッシュ、リセットして臨むことができる」
複数種目出場は田中が、レベルの高いパフォーマンスをするために効果的なことだった。以下、初日から順に田中の出場レースを紹介していく。