中国国内には700万人のチベット族の人たちが暮らしています。その精神的リーダーであるチベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世がインドに亡命して65年。チベット亡命政府は88歳になったダライ・ラマの後継者問題をどう考えているのか、そして、チベットを見たことがない若者が増える中、文化の継承をどのように行っているのでしょうか。一方で、宗教的統制が強まる中国国内の状況は。チベットの今に迫ります。

中国では、ダライ・ラマの“写真”すら飾れない

中国南西部にあるチベット族の、とある村。
この日、年に一度のお祭りが行われていました。

中国国内には、チベット自治区を中心に、約700万人のチベット族の人々が暮らしています。

この村では、チベット仏教を信仰するチベット族の人たちが、早朝から熱心に祈りをささげる姿が見られます。

チベット仏教のお寺にある、回すとお経を読んだのと同じ功徳が得られるといわれる、マニ車。

しかし、ここにひとつだけないものがあります。
チベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世の“写真”です。

お寺の入り口には、こんなスローガンが掲げられています。

「我が国の、宗教の中国化を堅持しよう」

中国政府が、2015年に打ち出した、信仰よりも中国共産党への忠誠を優先させる「宗教の中国化」
今、中国では、宗教活動への統制が強まる一方です。

特に、中国政府は、ダライ・ラマ14世(88)を「チベットの独立を企む、分離独立主義者」と位置付け、信仰はおろか、写真を飾ることすら厳しく禁じており、その存在はタブー視されています。

――漢族としてダライ・ラマについてどう思う?

漢族の男性「よくわかりません」

漢族の男性「よくない。彼は、反中国だから」

写真店の中には…

――ダライ・ラマの写真はありますか?

店主「ありません」

――どうしてですか?

店主「売ってはいけないのです」

――ダライ・ラマだけダメですか?

店主「だめです」

――習近平国家主席は?

店主「習近平国家主席は、我々の国家主席です。売れています」