いよいよ次の土曜日(1月13日)に迫った台湾総統選。立候補しているのは、与党・民進党の頼清徳(らい・せいとく)氏、最大野党・国民党の侯友宜(こう・ゆうぎ)氏、そして第3勢力の民衆党・柯文哲(か・ぶんてつ)氏の3人です。
3人は「台湾独立」「中国による一国二制度(統一)」には反対で、いずれも「現状維持」を主張。ただ与党の頼氏は現在の蔡英文政権と同様に、中国と距離を置く方針で、野党の二人は対話や交流を求めるなど融和的な姿勢です。主要な世論調査は全て頼氏がリードしていて、当選すれば、8年続いた民進党政権がさらに4年続くことになりますが、気になるのが中国の出方です。
中国の習近平国家主席は新年のスピーチで改めて台湾統一への意欲を示すなど、総統選も「中国との関係」が大きな争点と言えそうです。選挙後、どのような展開が予想されるのか、台湾政治が専門の京都女子大学現代社会学部の松本充豊教授に見解を伺いました。(聞き手・JNN上海支局長 寺島宗樹)
民進党・頼清徳氏が当選すれば、中国は更なるけん制か
現在の民進党・蔡英文政権は中国と距離を置き、アメリカとの関係を重視しています。中国は民進党政権を「独立勢力」とみなし緊張関係が続いていて、2022年8月にはアメリカのペロシ下院議長(当時)が訪台すると、台湾を囲む形で大規模な軍事演習を行いました。
現在も毎日のように中国の軍用機が防衛識別圏や「事実上の停戦ライン」とされる中間線を越えて飛行するなど軍事的圧力を強め、経済面でも関税の優遇措置の一部停止や、農水産物の禁輸措置などが続いています。
Q.与党・民進党の頼氏が当選すれば、中国は経済的、軍事的な圧力を更に強めるのでしょうか?
松本教授
中国が民進党政権にさらにけん制を強めるということは考えられます。新たな禁輸措置や関税優遇措置の停止対象が広がる可能性はあると思います。もう一つは観光客の問題で、中国は去年8月にアメリカや日本、韓国など各国への団体旅行を解禁しましたが、台湾は含まれていませんでした。中国側が台湾への団体旅行を解禁しないままの状況を続ける可能性もあります。
中国は先述の通り民進党を「独立勢力」と見なし、中国の台湾政策を担当する台湾事務弁公室は「独立は戦争を意味する」と強い口調でけん制しています。民進党の頼氏が当選すれば、軍事的な圧力が増すことも考えられますが、おととしのアメリカのペロシ下院議長訪台後のような大規模な軍事演習が行われることは考えにくいといいます。
松本教授
去年8月の頼氏のパラグアイ外遊時には、頼氏がアメリカに立ち寄ったことを受けて中国は軍事演習を行いましたが、かなり自制されたものでした。中国にとって、いま最も重要な課題は対米関係、さらには国内経済の問題で、台湾に対してあまり強硬な姿勢をとりすぎると、米国さらには国際社会との関係にネガティブな影響を及ぼしかねません。