陸上競技とは無縁の学生時代 「陸上は一番やりたくなかったスポーツ」

織田裕二さんと言えば、25年間誰よりも熱く世界陸上を届けてきたメインキャスター。長く世界陸上の顔として活躍してきたが、学生時代はテニス部に所属。陸上とは縁がなかったという。
高橋尚子キャスター:
織田さんは13年連続のMCで、25年というと四半世紀になるんですけれど。ライフワークとして
2年に1回の恒例行事ですよね。
織田裕二さん:
そうですね。こんなに続けるとは夢にも思っていませんでした。オファーが来た時にびっくりしたくらいで。ただ自信は全くなくて、スポーツは大好きだけど球技しかやったことなかったんです。野球だ、テニスだ、ラグビーをちょっとかじってみたりとかで僕にとって陸上は一番やりたくなかったスポーツなんです。野球やテニスをやるための(基礎)トレーニングが陸上の動きで「何が楽しいんだろう」と。だから陸上部の人たちの感覚がわからなかった。
高橋キャスター:
よく言われますね。
織田さん:
脚の速い子はただ単にテクニックもなにも無く、100mの速い子を世界中から集めたらああなったんじゃないですかって。そのつもりでこの世界陸上に入っていったから。でも、世界陸上のスタッフから「実は素質っていうのはほとんど10%くらいで、努力・テクニックが90%です」と言われて、聞いてるうちに「面白いな」と。
この面白さを僕だけで独占していたらいけない、お客さんにも伝えないと、と思ったんですよね。陸上が好きじゃない人にも面白さを伝えたいです。
ウサイン・ボルトが破った人類の壁

高橋キャスター:
長い間この世界陸上をご覧になられていて、今までで印象に残っている瞬間はどんな瞬間ですか。
織田さん:
いっぱいありますよ。(インタビュー時間)何時間あります?(笑)
例えばわかりやすい人で言ったら、男子100m世界記録保持者、ウサイン・ボルト(ジャマイカ)とか。北京五輪でとんでもない記録9秒6台を出したので、翌年の世界陸上ベルリン大会はものすごい雰囲気だったんです。
2008年に行われた北京五輪。当時21歳のウサイン・ボルト選手は、男子100m決勝で人類初の9秒6台をマーク(正式記録9秒69)。そのわずか1年後、2009年世界陸上ベルリン大会で、自身の持つ世界記録を0.11秒上回る9秒58を叩き出した。
織田さん:
僕も現場にいて、9秒58っていう。9秒5台なんて人間は走れないだろうと思っていました。陸上なんか知らないって人もボルトは知ってるってなるじゃないですか。
織田裕二のオレゴン予想 アメリカチームの活躍に注目

高橋キャスター:
今年の世界陸上オレゴン大会、ここを注目しておいてくださいねっていう・・・。
(織田さん、フリップに)『耳にタコ、アメリカ国歌!』
織田さん:
また勝ったかというくらい、僕はアメリカの選手が圧倒すると思っています。前回のドーハ大会は熱さっていう問題があったので、(アメリカは)ものすごくはっきりと「100mしか出ません」「100mとリレーだけ」「200mとリレーだけ」って割り切ったんですよね、あの時。今回の気候だったら、クリスチャン・コールマン(前回100m金、4×100mの2冠)とノア・ライルズ(前回大会200m、4×100mの2冠)とか、100m、200mのアメリカ人同士の争いも激化するのではないかと楽しみです。
高橋キャスター:
世界陸上のアメリカ(開催)は初めてなんですよね。しっかりここに合わせてきたアメリカチームというわけですね。
織田さん:
やっぱり層の厚さで言ったら、陸上王国の本来の強さを発揮する大会になるんじゃないかなと思っています。もしならなかったら逆に面白いですよね。どこの国の誰がそれを崩すんだというドラマにもすごく期待しています。
高橋キャスター:
この人に注目してほしいという選手や種目をぜひ教えてください。
織田さん:
日本人選手は、3000m障害の三浦龍司(20)、やり投の北口榛花(24)など、一発ハマって決勝で暴れてくれたらいいなと思っています。海外選手だと、今回の世界陸上で引退するアリソン・フェリックス(アメリカ)の最後の走りや、100mのシェリー=アン・フレーザー=プライス(ジャマイカ)とか、紹介したい選手がいっぱいいます。
「陸上競技を見たことがない人にも面白さを伝えたい」

高橋キャスター:
最後に世界陸上オレゴン大会への思いと熱さをぜひ伝えてください。
織田さん:
すごく一生懸命やっているからこそ、(その場で)起こる興奮、感動やハプニングも含めて心が動かされますし、全力を尽くしてくれるのが分かりやすく目に見えるのが陸上だと思います。パワーのある人もいれば、細い人もいたりって、こんなに世界の人種が集まってなおかつタイプも違うっていうスポーツはなかなかないと思うんですよね。
本当に面白いスポーツと出会えて、僕は今この面白さを何とか(陸上競技を)見たことがないという人にも伝えたいという思いです。ぜひ、最初から最後までお暇を作ってでもご覧ください。
高橋キャスター:
今年も暑い夏、熱い世界陸上、ぜひ届けてください。有り難うございました。
高橋キャスター(取材を終えて)
「織田さんが初めてメインキャスターをされた1997年のアテネ大会というのは、実は私が現役時代に初めて5000mで世界陸上に出た思い出の大会なんです。それから私はマラソンに転向して、現役を引退してキャスターになりました。その長い25年間、織田さんがずっと世界陸上を届けてくださっていたので、この時代の選手にとって織田さんはお兄さんみたいな存在なんです。メインは選手と言いますけれども、織田さんのメインキャスターとしての最後も楽しみにしたいと思います」
