「亡くなると“忖度の魔法”が解ける」

いわゆる“ジャニーズ問題”は性犯罪だけにとどまらず、ある意味“日本の姿”を映し出した。番組ではある3人のインタビューを通して問題点を浮き彫りにした。

ジャニーズ問題が大きく取り上げられるようになった発端は、今年3月のイギリスBBCの報道だった。番組制作を指揮した監督は言う。

BBC ドキュメンタリー監督 インマン・メグミ氏
「私か恐怖に感じたのは、2000年代にジャニーズ事務所が文春を名誉棄損で訴えた時、『ジャニー喜多川が事務所の若いタレントを性的に虐待していた』という文春の報道は事実であるという民事判決が出たにもかかわらず、当時のメディアはそれを報じることも取材することさえしなかったこと。2000年頃国会の委員会でもなぜこの問題が深刻に取り上げられなかったのか…(中略)ジャニー喜多川氏が亡くなった時に安倍総理は弔辞を送った。この関係やジャニーズ事務所の重要性を踏まえると、なぜこのようなことが起こり再発防止には何をすべきか調査する義務は政府にもある」

音楽プロデューサー松尾潔氏は、BBCの報道を受けSNSやラジオでジャニーズ批判をしたところ、業務提携先から契約を切られた。

音楽プロデューサー 松尾潔氏
「“でも”彼(ジャニー氏)が残した芸術は素晴らしいとか、“でも”彼が作り上げたカルチャーは永遠とか(いう人がいるんだけど)、シンプルに言うと子供の涙の上に成り立つようなアートって、いります?僕ら…(中略~僕のことを)応援してるよって言ってくれる方はたくさんいらっしゃいましたが、ほぼ例外なく“個人的”におっしゃる。個人的な場以外では一切そのことを口にせず、何もなかったかのように以前からの仕事を同じスタンスで続けているのを見ると、やっぱりこうなのか…って、どんよりした気持ちになりました。(中略)既存のシステムを“変えた”って言われたくないんでしょうね。『お前のあの言葉、あのアクションで昔(うまくいってた)のシステムが崩れちゃったじゃないか』って、“破壊者”って思われちゃう…(中略~今回、色々変化はあったが)業界の人みんな感じてるのは“一回休み”みたいな匂い…。年が明けたら、いろいろあったけどさってリセットされるんじゃないか…。禊が済んだかのような空気が…」

そして、芸能界を見続けてきた、評論家は言う…。

アイドル評論家 中森明夫氏
「(藤島社長の謝罪会見を見て)それまでメリー喜多川氏もジャニー喜多川氏も僕ら動いてる映像で見たことがない、声もほとんど聞いたことがない。つまり藤島・喜多川一族で現社長が動画で出てきたインパクト。これはある意味で“人間宣言”だと。神秘の力を使って芸能界を支配してきたイメージがあるんですけれど、それがあの謝罪で“やっぱりこの人も人間だったんだ”って…。で、人間であるジャニーズ事務所のトップが罪を認めた瞬間、もう崩壊してしまった」

そして中森氏は、ジャニーズにしても自民党の問題にしても、日本の社会はすべて共犯者だったのではないかという。

アイドル評論家 中森明夫氏
僕が共犯と言ったのはジャニー喜多川氏の話は日本人みんな知ってたじゃないかって話。それだけではない。ひとつはジャニーズ、ひとつは自民党。政治資金規正法がザル法だってみんな言っていましたし、もっと昔、田中角栄さんの金脈問題の時、立花隆さんがレポート書かれた。政治記者はみんな知ってるよ、そんなことって…。しかしあの時も結局は外国人記者が問題にして、田中内閣倒壊…。今回もBBCから…。(中略)今キックバックで安倍派が叩かれていますけど、安倍氏であれ、ジャニー喜多川氏であれ存命のうちに問題をきちんと暴いてほしかった…。でも存命であれば暴けないというリアリティーもある。本人に対する忖度が働くから…。しかし、亡くなると“忖度の魔法”が解ける

奇しくも2023年大きく話題になったのはいずれも頭文字が「J」だと中森氏は言う。ジャニーズ=Johnnys、そして自民党=Jimintou、そして日本=Japan。日本では外圧か、権力者の死以外に忖度の魔法を解くカギはないのだろうか?

(BS-TBS『報道1930』12月25日放送より)