「真の駅伝日本一決定戦」ニューイヤー駅伝が2024年も元日に開催される。
全国6地区の厳しい予選を勝ち抜いた41チームが出場。群馬県庁発着の7区間全長100キロの空っ風が吹きすさぶ上州路を、日本を代表するトップランナーたちが駆け抜ける。今大会からは区間割とコースの一部が変更され、2区が各チームのエースが集う最長区間(21.9キロ)となった。「花の2区」に誰が起用されるのか注目される。
パリ五輪イヤーの始まりを告げるレースは、今年10月のマラソングランドチャンピオンシップ優勝でパリへの切符を掴んだ小山直城(27)を擁し、3連覇に挑むHondaと3年ぶりの王座奪還を狙う富士通、箱根駅伝を沸かせた大型新人・田澤廉(23)の加入で選手層に厚みを増したトヨタ自動車による三つ巴の様相を呈する。そんな中、2019年の駅伝参戦以来5回目の挑戦で、初の駅伝日本一に挑むのがGMOインターネットグループ。前回大会では大迫傑(32)の出場でも大きな話題となったが、今年は創価大学から注目のルーキー・嶋津雄大(23)が加入した。
嶋津が脚光を浴びたのは2020年の箱根駅伝、創価大2年生の時だった。アンカーの10区を任された嶋津は、当時の区間新記録をマーク。順位を2つ上げ、創価大学に初めてのシード権をもたらした。大学には休学を経て5年生まで在籍し、4年連続で箱根駅伝を走った。4年時には4区で区間賞を獲得するなど大学駅伝のスター選手として活躍した。
嶋津は先天性の「網膜色素変性症」という国指定の目の難病を患い、現在も視力は低下し続けている。視野が狭くなったり、暗い場所では周囲が見えにくくなったりするため、練習時間や場所が限られ、夜のレースではライトを装着しながら走ることもあった。「怪我が怖いので、むやみやたら夜に外出したりはしないです。たまに人にぶつかってしまう時は本当に申し訳ないと思いながら謝ります。点字ブロックを歩いたりもしています」と日常生活での苦労を語る。陸上競技との出会いも目の病がきっかけだった。
「小さい頃から球技は上手く出来なくて、ボールが飛んできても見えないので、ずっと消える魔球みたいな状態で。唯一自分が出来そうな競技が陸上でした」
中学生で始めた“唯一の選択肢”と語る陸上競技で嶋津はひたすら努力を重ね、実業団入り。走ることが仕事になった。競技を続けていく中で「自分は何のために走るのか」という事にも気付いたという。
「自分の走りを通じて同じ病の方々に『勇気が出た』とお手紙を頂いたりしました。その時、自分のためだけに走っているんじゃ駄目なんだと気付いて、それからはパフォーマンスが上がっていきました。誰かのためや何かのために走る時に、人はもう一段階レベルアップ出来るのだと思って。一人じゃないと気付いた事も大きくて、みんなの代表みたいな形でこれからは走っていこうと思いました」
一人じゃないから頑張れる。応援をチカラに、みんなの想いを背負って嶋津雄大は走り続ける。「ニューイヤー駅伝では最後まで勝ち切る、自分に勝ち切る走りに注目してもらいたい」。2024年元日、勝負の始まりを告げる号砲が鳴り響く。