「金・反響目当てにしか見えない」ひぼう中傷とも闘う決意
(1)PTSD
事故から1か月ほどで仕事に復帰した松永さんでしたが、事故や警察から電話があった時間になると、どうきがしたといいます。そんなときは上司にことわり、トイレにこもらせてもらいました。また約1年間、2人の顔が思い出せなくなるような症状も出たといいます。
(2)金銭面
松永さんは仕事に復帰するまでの間、会社のさまざまな休暇を組み合わせて休みを取れました。そうした制度がなければ、職を変わったり失ったりして、金銭的に追い詰められることになると指摘します。特に一家の家計を担う人を失えば、家族への影響は大きいといえます。こうしたことに加えて、心や体が傷つけられれば、その医療費も大きな負担です。
また、裁判に参加する被害者を支える「国選弁護」の制度も、真菜さんが「将来のために」とためた貯金で「資力がある」とみなされ、制度を使えなかったといいます。たまたま、莉子ちゃんが乗っていた自転車にかかっていた保険で弁護士費用をまかなうことができました。
(3)捜査協力
被害者や遺族は、捜査協力のために仕事の休みを工面しなければならないと指摘します。被害者遺族として裁判に参加する際も同様で、裁判員裁判のように仕事を休める制度が求められると指摘します。また、捜査協力で調書の作成など被害を追体験するフラッシュバックに悩まされたと言います。
(4)誹謗・中傷
「金目当て」「ぶっ殺す」SNSに投稿された誹謗中傷です。松永さんは警察に被害届を提出して闘おうと決めました。ネットでの誹謗中傷という問題が注目を浴びるなか、そうすることで社会の議論を呼び起こしたいと考えました。
松永さんは、ニュースサイトやSNSの見出しだけで判断して、誤った情報や認識で人に怒りを向ける人間が一定数いるとしたうえで、こうしたことも被害者や遺族の多くが経験する2次被害だと指摘しました。
「もちろん悪意がなくて、応援してくれる気持ちなのはわかっているんだけれども・・・」松永さんに向けられる励ましのことばも、時として心を傷つけたと言います。
「前を向いて」「2人が浮かばれない」前を向こうとしている中で、こうしたことばに混乱したと言います。「放置はしてほしくないんです。傷つけたくないから、触れないでおこうっていうのは、それはやっぱり望んでいなくて」
毎日一緒に散歩をしてくれた中学からの同級生。「ごはん作るの大変でしょ」といっておにぎりを届けてくれた町内会の人。仕事に復帰したあと、毎日同じ電車で帰ってくれた会社の先輩。話を聞いてくれた臨床心理士や、報道陣との間に入ってくれた弁護士など、静かに松永さんを見守ってくれた人たちの話が続きました。そしてスクリーンには「ただいま」と松永さんを出迎える莉子ちゃんの姿、「おかえりなさい」という真菜さんの声、莉子ちゃんを抱きしめる松永さんの姿を写した動画が流れました。
松永さんは講演の冒頭に「被害者や遺族が講演をすることに、意味はあると思いますか」と尋ねていました。遺族自身が講演をすることで、莉子ちゃん、真菜さんの姿を見ることで、共感が生まれると考えています。当事者が懸命に声を上げる、人々が共感して、共感から社会が改善されると、松永さんは信じています。
地方では、車がなければ生きていけない地域もあります。被害者も加害者も生まないことも、被害者支援としました。「多くの人々がこういうふうに家に帰って、ただいま、おかえりと言い合える社会、そうなってほしい」松永さんはそう言って、講演を締めくくりました。














