クリスマスを前にこれから出荷の最盛期を迎えるイチゴの話題です。
長崎県はイチゴの収穫量全国6位。県内でイチゴの栽培がさかんな南島原市では最新のデジタル技術を駆使して収穫量を伸ばしている農家がいます。
本多衛治さん・裕子さん夫妻は、長崎県内の優れた農家を表彰する「ながさき農林業大賞」でことしの最高賞に選ばれました。
生家は全国有数のイチゴ農家 父「俺より上を行った」

真っ赤に実り、食べごろを迎えたハウスイチゴ。
本多さん夫妻は、イチゴを育てて20年です。

本多衛治さん(42):
「大玉で果汁もたっぷりありますし、甘みのなかに程よい酸味があります」

味の良さはもちろん、独自の栽培方法も高く評価され、本多さんは11月、県内の優れた農家らを表彰する「ながさき農林業大賞」のことしの最高賞「農林水産大臣賞」に選ばれました。

本多さんが育てているのは長崎県の主力品種「ゆめのか」です。
摘みたてを試食させてもらうと──

久富アナウンサー:
「みずみずしくて、口の中に溢れました。すっごく甘いですね、想像していた以上でした」


県内有数のイチゴ産地・南島原市でイチゴ農家の長男として生まれた本多さん。現在は全国のイチゴ農家の中でも有数の広さにあたる 89アール(約2,700坪)のハウスでイチゴを栽培しています。

本多衛治さん:
「嫌々ながら始めた農業だったんですけど、やっぱすればするほど、その農業の魅力とかにはまっていてですね」

父・勝則さん(69):
「俺より上を行ったなって思いました(笑)研究熱心で、もう任せて良い」
分単位でハウス環境を管理 イチゴファースト(最優先)の生活
イチゴの出来を左右するのがハウス内の温度や湿度の調整です。どうすればベストな状態を保てるか──

そのために本多さんが10年前から取り入れ始めたのがスマートフォンを使ったデータ管理です。

本多さん:
「(導入)前はもう農家の勘ですよね。“大体今はこのくらいの日射量やけん、いまハウスの中は何度ぐらいだろう”っていうような感覚で管理をしていたんです。
ハウスの中の気温が1日中、5分単位で出てくるんです」
久富:(5分単位って結構細かいですね?)
本多さん:
「細かいですね。ものによっては1分単位とか2分単位とかですね。だからすぐさまハウスの変化 “温度の変化”とかに気づいたりすることができます」

いまでは『温度』や『湿度』だけでなく、『二酸化炭素濃度』や『イチゴの芯の温度』など8つのデータをスマホで管理しています。
こうしたデジタル技術を導入しているイチゴ農家は県内ではまだわずか。離れた場所からハウスの状態が分かるのもデジタル化のメリットです。

数値に異常が出たらすぐにハウスへ向かいます。ハウスを開け閉めして温度を調節したり、光合成を促すために二酸化炭素の量を増やしたりします。
細かな調整がイチゴの仕上がりに影響します。
本多さん:
「大きさもそうなんですけど、実の張り方、艶の出方とかが、だいぶ変わりますね」

24時間のハウス管理──本多さんは「イチゴファースト(最優先)の生活だ」と笑います。
『雇用型経営』で同地域の農家の平均出荷数の約3倍
本多さんのイチゴ作りに欠かせないもう一つの存在が外国人材です。本多さんはさらなる生産拡大に向けて『雇用型の経営』に取り組んでいて、農業を学ぶ技能実習生ら8人が勤めています。※技能実習生3人+特定技能5人


本多さん:
「若いからっていうのもありますし、目が良いんですね。手も優しい。潰れたとか、潰れてないとかがはっきりわかる。そういうのがやっぱり上手ですよね」

ベトナムから来日 グエン・ヌ―・ファンさん(29):
「楽しいです。みんな優しいです。多分またベトナムでイチゴ農家になります」


作業効率が上がったことで収穫量は以前の倍に。現在は1日におよそ1,700パックを出荷しています。これは同じ地域のイチゴ農家の1軒あたりの平均出荷数の3倍以上にあたります。

JA島原雲仙東南部基幹センター販売流通課 大槻賢一さん:
「今どんどん高齢化とかで(栽培)面積が減っているんで、本多さんのように他の生産者の方もできていければちょっともうちょっと(部会全体が)活気づいてくるとかなって」

妻・裕子さんの役割は農作業だけはありません。給与計算など経理面でも夫を支えています。

妻:裕子さん:
「夫がやっぱりチャレンジ精神が強いっていうか、新しいものを取り入れたいっていう感じなので、何か少しでも力になれればと思っています」
イチゴのロスをなくす新たな挑戦


いま、2人が新たに挑戦しているのは廃棄されるイチゴを減らすためのジャムづくりです。
本多裕子さん:
「ちょっとの傷で、もう出荷できないんですよね。お客様の手に渡ったときにはその傷が広がってるので。ちょっと削れば使えるイチゴを(活用したい)」

今後は地域の店舗や市民からもアイデアを募り、ケーキ用やアイス用など用途に合わせて作り方の幅を広げたいと考えています。
試食したジャムの感想は──
裕子さん「美味しくできました」
衛治さん「果肉が結構いっぱい入っていて美味しいです」

本多さん夫妻は『行動力』と『向上心』で理想のイチゴ作りを追い求めています。

本多衛治さん:
「自分がいろいろなことにチャレンジすることで、農業の良さとか素晴らしさを、地域に発信できたら良いなと思いますし、そういうことを通して地域の農業の活性化に繋がれば一番いいなと思ってます」


イチゴファーストな2人の工夫と努力が詰まった甘い果実。南島原から全国へ届けます。