71歳の男性が竹を使って、滑らかな曲線が美しいアート作品を制作しています。男性は、50歳のときに不慮の事故で左目の視力を失いましたが、佐賀県多久市で制作を続けていて、国の内外で注目されています。

◆美しい曲線の竹アート

美しい曲線で形作られた、仲睦まじい夫婦鶴。リングのようなデザインのこの作品には、つなぎ目が一切ありません。実はすべての作品が、それぞれ1本の竹から作られています。

作品を見た人「竹一本でね、すごいですよね」

◆田辺良輝さん71歳

制作したのは、佐賀県多久市に住む田辺良輝さん71歳です。


田辺良輝さん「竹を見て作品をどんなふうに作るかを切る前に考えます。竹も生きもんだからですね、無駄にはしたくないからですね」

大まかなデザイン画は作るものの、素材の竹に下書きはしません。思い描いた形になるよう、切っていきます。

◆左目の視力を失う

28歳で板金塗装の会社を設立した田辺さん。当時は、依頼者の希望通りの色を出すのが得意でした。しかし、50歳のときに不慮の事故に遭い、左目の視力を失ってしまいました。


田辺良輝さん「左目を失って、もうこれは無理ばいと。色合いが合わんとですよね、車の繊細な色だから。お客さんに失礼で、なんかだましだまししよるような感じで」

◆きっかけはバーベキュー

竹の作品に取り組むようになったきっかけは、そのころ参加した行事でのある発見でした。


田辺良輝さん「竹炭を作って、その炭のできたのでバーベキューしようと、たまたま炭を見たら変わっていると思って、それをサンダーで磨いたら竹の色がきれいで、筋もきれいに入っとるし、こんなに竹はなるんだって」


ふんわり広がったドレスも、孫の姿をイメージしたというこの作品も、元々は1本の竹。一般的な竹細工の概念からは、かけ離れたものばかりです。


田辺良輝さん「すればするほど、どんどん竹にはまって、楽しくてワクワクして」

◆竹アートの工程

作品の魅力になっている美しい曲線を、どうやって作り出しているのでしょうか。工程の一部を見せてもらいました。


まずは、竹を炭にならない程度の熱でじっくり温め柔らかくします。その後、竹を曲げる工程にはいくつか方法があるそうですが、この作品の場合、何度も手で曲げて形を作っていきます。目指すのは、どの角度から見ても美しい作品です。


田辺良輝さん「自分のイメージに形を整えていく、なかなか竹は動いてくれんが、割れるときは割れます」