豪雪地 安塚町の挑戦『雪国売ります』

1987年(昭和62)年2月に当時の新潟県東頸城郡安塚町(現在の上越市安塚区)が、かつての後楽園球場(東京)で開いた『雪まつり』~サヨウナラ後楽園球場 スノーフェスティバル~を振り返ります。
悩ましい豪雪を逆手に取り、行政と町民とが一体となって“雪国”を売り込んだこのイベントは「第3回 日本イベント大賞」を受賞し、全国の注目を集めました。
(前篇からのつづき)

思わぬ出費

実は後楽園球場では1950(昭和25)年に、新潟から雪を運び込んで「大学対抗スキー大会」が開かれたことがありました。
外野席にゲレンデとジャンプ台を造り、早稲田や慶応の選手が回転とジャンプを競いました。新潟の雪が後楽園に運ばれるのは、おそらくそれ以来のことです。

安塚町では町民1000人を上京させる準備を進めていました。町民の5人に1人です。
往復の交通費やホテルの宿泊費も町が負担するつもりです。

ところがふたを開けてみると、イベントの観覧希望者は町の計画をはるかに上回る1500人となりました。実に町民の3人に1人が観覧を希望したのです。

思わぬ予算オーバーに役場は頭を抱えました。
26~27億円の財政規模の町にとっては痛い出費です。

結局、675万円の予算を追加計上するための臨時議会が開かれ、賛成16反対1で議案は可決されました。

町を挙げての一大イベントに異を唱える声も当然ながらありました。
ある高齢の女性の憤りの声が印象的です。

「後楽園にはいかねぇ!行く必要はねぇ!その金は天から降ってくるのか?町にもっとでっかい病院でも建てねば駄目だこて。(いまの)あんな病院は汚くて年寄りは便所も入れない…」