■あの「さらさら」は「紙じゃない」!?逆転の発想から生まれた投票用紙
スラスラっとなめらかな書き心地をもつ投票用紙の正体を明らかにするために、開発した「ユポ・コーポレーション」を直撃した。ユポ・コーポレーションは1969年創業、「ユポ」と呼ばれる「水に強い」「紙よりもしなやか」などの特徴を持った合成紙を製造している。耐水性があることから、飲食店やカラオケのメニュー表、山の地図、治療の優先順位を決定するトリアージタグなどに使われている。

それは、折ってもすぐに開いてしまうという性質。
地図を折りたたんでも、そのままではすぐ開いてしまうなど、扱いが難しいケースが報告されていた。しかし、そんな“欠点”に目をつけたのが、投票用紙を集計する機械などを作る「ムサシ」という会社だった。それまでの紙だと、ひとつひとつ投票用紙を開く作業があり、開票に時間がかかっていた。「ユポ」の開きやすい性質を使えば、有権者が折って投票箱に入れても、投票箱から出したときには自然と開くため、即日開票が可能になると考えた。「ユポ」の欠点に利点を見出した “逆転の発想”だった。
その後、開票機などとの相性をよくするため、さらに改造され、現在使われている唯一無二の「投票用紙」になったそうだ。
紙に歴史ありだな、などと感心していると、担当者から意外な一言が・・・
ユポ・コーポレーション 営業本部加工品部長 鹿野民雄さん
「ユポは紙じゃありません。『プラスチックフィルム』です」
え?紙じゃない?!
プラスチックと聞くと文字は書きにくそうだが、なぜ投票用紙が、なめらかな書き心地なのだろうか。
ユポ・コーポレーション 営業本部加工品部長 鹿野さん
「お年寄りから若い人までいるじゃないですか。力のない人も書けるよう鉛筆がうまく削れるような設計になっているんですよ。やすりのように」
投票用紙の表面は特殊加工が施され、軽い筆圧でも書けるようにギザギザしているそうだ。