「ゴールさえ決まれば勝てる」

「清水は日本のブラジル、だから、応援もブラジルスタイルで」と本場・ブラジルから招いたプロ奏者が奏でる軽快なサンバのリズムにあわせて、右へ、左へと、打ち振られるいくつものオレンジ色のフラッグは、まるで大きな波のように見えた。
さらに、上空へ目をやると巨大な飛行船が登場。何の宣伝かと思いきや、その船体には「がんばれ!清水エスパルス」の文字が。クラブ創設時からいまもスポンサーを続けている航空会社の粋な応援が、オレンジサポーターの胸をさらに熱くさせた。

「プワァー」
いまでは禁止されている甲高い音色が特徴のチアホーンが絶え間なく鳴り響く中、プロサッカー初のタイトルをかけた決勝戦はキックオフ。ゲームは前半、戦前の予想を覆し、エスパルスが何度もヴェルディゴールを脅かす展開となる。
長身DFマルコ・アントニオのFKはゴールからわずかに逸れると、続いては、元ブラジル代表FWミランジーニャのパスに反応した“牛若丸”FW向島建のシュートがポストを直撃。さらには、平岡宏章のロングスローを“飛行機ポーズ”で人気を博したトニーニョが頭で合わせるが、これもネットを揺らすことはできない。
なおも攻勢をかけるオレンジ軍団のプレーに、サンバのリズムは大きくなる一方。守っても、ヴェルディの攻撃をGK真田雅則を中心に、しっかりと守り切り、スコアレスで前半を折り返す。
「ゴールさえ決まれば、ヴェルディに勝てる」
誰しもが思った後半12分、落とし穴が待っていた。