24年春闘を占う物価インパクト大。最低賃金1500円を2030年代半ばに

民間エコノミスト約40人による予想をまとめたESPフォーキャスト調査によるグラフを見てみよう。
――22、23年度のそれぞれの時点で予想した各年度の物価上昇率がどんどん上振れてきている。
東京大学大学教授 渡辺努氏:
24年の春闘が今は非常に大事なわけですが、年度のCPI(消費者物価指数)の予測がポイントになります。例えば11月は連合がいろいろなターゲットを決めたり、春闘に向けて仕込みが本格化する時期です。その時期に賃上げのベースになる22年度の物価上昇は2.66%。同じものが23年度は2.84%で、高まっているわけです。春闘を占う上での物価面でのインパクトは、23年の方がむしろ大きいわけです。

もう一つ渡辺氏が重要視しているのが最低賃金の先行きだ。
東京大学大学教授 渡辺努氏:
大企業は賃上げできるということを前提にしたときに、問題は中小企業で、最低賃金周りの賃金をちゃんと上げられるかがポイントになります。毎年夏に最低賃金を決めるのですが、23年は1004円と4~5%上がっている数字で決着しました。しかし、それだけでは不十分で、私は財政諮問会議とかで皆さんに訴えたのは、先々最低賃金が上がっていくという絵をぜひ政府に見せてほしい、それを国民に対してアピールしてほしいと。
――足元で賃金が上がっていることも大事だが、今後賃金が上がっていくということを人々が予想する、あるいは信じることがもっと大事だと。
東京大学大学教授 渡辺努氏:
時間軸効果は、物価については日銀がフォワードガイダンス(先行き指針)をしているわけですが、賃金については最低賃金を使って政府がやったらどうかというアイデアでした。
――結果的に総理は2030年代半ばに1500円を目指すとはっきり言った。
東京大学大学教授 渡辺努氏:
10年かけて1500円に持っていくということを表明されているわけです。そうだとすると、例えば24年の春闘を特に中小企業の組合の方が戦うときに、最低賃金だとこういうふうに上がっていくのだと。であれば私達の賃金もそれと並行的に上がっていってしかるべきではないかということを経営者の方に言いやすいですし、経営者の方もさすがに最低賃金を下回ることは無理なわけですから、より中小企業の賃金を上げやすくなるのではないかと。私は結構これは効き目があるのではないかなと期待しているところです。
――24年の春闘で賃金を23年以上に引き上げるという実現可能性はかなり高くなってきているが、そうならない危険性はあるのか。
東京大学大学教授 渡辺努氏:
春闘でそれなりの水準になる、あるいは23年を上回るというのはかなりの確度でそうなるだろうと思っています。そうならないリスクは心配する必要はないのかなと。あえて言えば問題は、賃金の上昇があるとは言っても物価ほどには上がっていかないことによって実質賃金が下がってしまい、消費が弱くなってしまう。この辺は心配です。
もう一つは日銀の政策です。仮に24年の春闘で賃金がそこそこうまくいくのだとすると、当然政策金利を変更するという議論が出てくると思います。そこからはいろいろな不確実性があって、議論がまだ十分になされていないので、いろいろなリスクがあるかなと。
――いずれにしてもデフレ脱却の最後の一番大事な局面に今あるということだ。
東京大学大学教授 渡辺努氏:
そうですね、そう思います。
(BS-TBS『Bizスクエア』 11月25日放送より)














