韓国の元慰安婦らが損害賠償を求めて日本政府を訴えた裁判について、韓国の裁判所は、原告の訴えを退けた1審判決を取り消し、日本政府に慰謝料の支払いを命じました。

元慰安婦の原告 李容洙さん
「ありがとうございます、ありがとうございます」

この裁判は、李容洙さんら韓国の元慰安婦や遺族が日本政府を相手取り損害賠償を求めたものです。

1審のソウル中央地裁は、国家は他国の裁判権に服さないという国際法上の「主権免除」の原則を認め、原告の訴えを退けていました。

しかし、2審のソウル高裁はきょうの判決で、「現在までに形づくられた国際慣習法を考慮すると、日本に対する韓国の裁判権が認められる」と判断。1審判決を取り消し、原告に1人あたり日本円でおよそ2300万円の慰謝料を支払うよう、日本政府に命じました。

一方、慰安婦問題の解決をうたう2015年の日韓合意について、ソウル高裁は「日本政府が裁判で意見を主張しなかったので争点にならなかった」と説明しています。

元慰安婦をめぐる裁判では、2年前にもソウル中央地裁が「主権免除」の原則を認めず日本政府に賠償を命じていて、この時は日本政府が裁判への関与を拒んで控訴せず、判決が確定しました。

韓国の元慰安婦らが損害賠償を求めて日本政府を訴えていた裁判で、ソウル高裁が日本政府に賠償を命じた判決を受け、外務省の岡野正敬事務次官は尹徳敏駐日大使に対し、「極めて遺憾であり、断じて受け入れられない」と抗議しました。

そのうえで、慰安婦問題を含む日本と韓国との間での財産・請求権の問題は1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決済み」だと強調。

慰安婦問題については、2015年の日韓合意で「最終的かつ不可逆的な解決」が日韓両政府の間で確認されているとして、韓国政府に対して適切な措置を講じるよう求めました。