「パレスチナ人を絶望に」 情報機関元トップが語るイスラエルの“失敗”

一方で、こうした主張に真っ向から異を唱える人がいる。イスラエルの情報機関の一つ、シンベトのトップを務めたアミ・アヤロン氏だ。
シンベトはイスラエル国内の治安維持のため、パレスチナ自治区に関する情報をくまなく収集。今回の戦闘でも、ハマスの拠点や司令官らの居場所の特定を行うなど、パレスチナを知り尽くす機関だ。1996年から4年間シンベトを指揮したアミロン氏は、2000年に退官。その後一転して、イスラエルとパレスチナの「2国家共存」路線を訴え始めた。
アヤロン氏はイスラエル側だけで1200人以上が犠牲となったハマスの大規模な奇襲については強く非難する一方で、これまでのイスラエル側の姿勢について「失敗だった」と言い切り、こう続けた。
「過去15年の大きな過ちの背景には、パレスチナ人を『パレスチナ“国家”の市民』として見てこなかったということがあります。彼らは、自ら自己決定し、独立した状態にある民族であると考えています。しかし、私たちはそのように見てこなかった。『パレスチナ人』として、彼らを認識してきませんでした」
アヤロン氏は、過去15年間にわたり主にネタニヤフ政権が行ってきた政策こそが、「イスラエルに対するパレスチナ人の信頼を完全に失わせた」と考えている。占領地での入植拡大、ガザとヨルダン川西岸の分断などが「パレスチナの人を絶望の淵に追いやった」と話し、現在まで続く政策を正面から非難した。