特集「この人に聞く」、今回は鹿児島出身の起業家・奥田浩美さんです。

皆さんは「スタートアップ」という言葉をご存じでしょうか。新しい技術やアイデアを生み出し、成長する企業のことなどを意味し、政府も今年から支援を本格化させました。

これまでに4つの会社を立ち上げ、鹿児島県のスタートアップ推進協議会の委員を務めている奥田さん。鹿児島への思いやこれからの夢について聞きました。

(奥田浩美さん)
「どこかの何とか市にある干物屋さん一軒はスタートアップじゃないが、“HIMONO”という文化をつくって。アメリカでもアフリカでも売っていって、一つのブランディングをつくる。何千億の企業にする。これはスタートアップ。新しい価値観をつくるし」

起業家の奥田浩美さん(57)。鹿児島県曽於市出身で、現在、東京のIT関連会社の代表です。県のスタートアップ推進協議会の委員を務めていて、今月24日、鹿児島の経済や教育分野の代表を前に講演を開きました。

(講演:奥田浩美さん)
「何とかしてほしいなとか。特に私たちの年代になると、“いただきたい族”が増える。私が変化そのものに、僕が変化そのものになること。そういうことがスタートアップ支援にはものすごく大切になる」

新しい技術やアイデアを生み出し、成長する企業などを指す「スタートアップ」。岸田総理も今年を「スタートアップ創出元年」とし、経団連は2027年までに起業の数を現在の10倍にあたる10万社へ増やす目標を掲げました。

イベント会社など、これまで4つの会社を立ち上げてきた奥田さん。活動の原点は鹿児島大学を卒業した後、福祉を学んだインド留学です。貧困の実態を目の当たりにし、帰国後、26歳のときIT技術を取り入れた国際会議の運営会社を設立しました。

(奥田浩美さん)
「ITは世界を幸せにするし、格差をなくす。もしかしたら私は一人一人倒れている人を救うことはできなくても、海外と接することはできたから、それを一つの武器にして、ビジネスをやってみようと思った」

鹿児島の介護現場でスタートアップのヒントを見つけたこともあります。動かなくなったロボットを高齢者が励ます姿を偶然見かけたことが、新たな製品開発に繋がりました。

(奥田浩美さん)
「ロボットは必ずしも役に立つだけの存在じゃなくて、励ましてあげる存在もあるんだなということで、そこからかわいがってあげるロボットとか。そういう研究につながっている」

何気ない体験や気付きから生まれる、新しい価値観。新規事業を始める鹿児島の開業率は4.4%と全国平均の5.1%を下回っていますが、奥田さんは「変化を恐れず、起業家を育てる土壌をつくってほしい」と話し、鹿児島の可能性にも期待しています。

(奥田浩美さん)
「あまりまだ知られていない価値観を推し進めていく。鹿児島はとてもチャンスだと思っている。食べ物もおいしいし、観光資源もある。海の資源も本来は豊か。そこにスタートアップ的な発想を持ってくると、世界中がつながっているから。単なる貿易みたいなものを超えた産業づくりができる」

(記者)「鹿児島の基幹産業と言われている農業や観光と(スタートアップは)リンクしやすい?」

(奥田浩美さん)「めっちゃしやすい。本当に期待しかない」

(奥田浩美さん)
「こんな冒険したって成功しないんじゃないかなとか。社会が蓋をかぶせているのが今の日本。
鹿児島は泣こかい、飛ぼかい、泣こよかひっとべ(泣こうか、飛ぼうか、泣くぐらいならとんでしまえ)という、ひっとべ文化が本来はあったはず。
鹿児島は(冒険が)得意だったし、得意だよねと鹿児島から言い続ければいいんじゃないかと思う」

「鹿児島から世界へ羽ばたく企業のサポートを」奥田さんのチャレンジはこれからも続きます。