37年ぶりに社会に戻る死刑を免れた無期懲役囚

塀の中の一角に社会復帰に馴染ませるための部屋がある。

彼は60代後半、強盗殺人の無期懲役囚だ。仮釈放となり、明日、37年ぶりに社会に戻る。

無期懲役・強盗殺人 60代前半
「この頃ずっと(仮釈放で)出た人がいない。自分もダメかなと思っていた」

仮釈放が出たとの情報は、たちまち無期懲役囚たちの間に広がる。

無期懲役・強盗殺人 服役23年・70代前半
「長いなんて言っていられない。目標がありますから。出させてもらいます」

そして翌朝。 受刑服を脱ぎ、社会に帰る為の私服に着替える。 

--夕べは眠れましたか?

無期懲役・強盗殺人 60代前半
「眠れなかったので今眠いです」

仮釈放の手続きが進む。作業報奨金は83万円。これからの人生を生きる全財産だ。

無期懲役・強盗殺人 60代前半
「お金を扱うのは37年ぶりです。500円玉(見るのは)初めて」

総務部長
「無期懲役の仮釈放は生涯続く。何かあったらまた戻ってきてしまう。そういうことが決してないように」

死刑を免れた無期懲役囚が37年ぶりに一般社会に帰っていく。

“死刑より無期懲役囚として一生、被害者への贖罪を続けさせるべき”

仮釈放された無期懲役囚。凶悪な事件を起こした彼は故郷には帰れず、更生保護施設「古松園」に身を寄せる。早速、岩戸顕園長から遵守事項の説明を受ける。

更生保護施設 古松園 岩戸顕 園長
「お酒を一切、飲まないこと。キャバクラなど接待を伴う飲食店に出入りしないこと」

彼に個室が与えられた。刑務所の独房との違いに戸惑いの連続だ。

仮釈放された無期懲役囚
「新鮮に映りますね。(慣れるのが)大変。若いときと違いますからね」

岩戸園長は服役中の無期懲役囚70人の身元保証人になっている。

彼らと接するうちに、死刑よりも無期懲役囚として一生、被害者への贖罪を続けさせるべきだと考えるようになった。

更生保護施設 古松園 岩戸顕 園長
「死刑だったら一瞬の間で終わりますからね。ただ重みが死刑というだけであって、あっという間に終わり。だけど無期懲役は延々といつ出られるか分らない30年、40年以上も続くわけですからね」

法務省内で死刑に関して議論されているが、詳細は殆ど明らかにされていない。

藤本哲也 最高検参与(矯正協会会長)
「人の命を奪ってはいけないと言っている国家が、刑罰として人の命を奪うことが許されるかという大きな疑問がある。この制度を作ったのは政治家ですから、政治家がどう判断するか。言い換えればその政治家を選んだのは国民ですから。国民がどう判断するかなんですよね」

凄惨な事件が後を絶たない中、“死刑”と“無期懲役の終身刑化”の狭間で、死刑制度そのもののあり方が問われている。