イチロー氏(50、マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)の高校球児指導が今年も実現した。「今年も限られた時間の中ではあるが、積み重ねられた思いに応え、純粋で熱い球児たちと向き合う」というイチロー氏が今回訪れたのは、北海道の旭川東高校。きっかけは一昨年の大晦日に学校関係者から届いた「悲願を叶えたい」という一通のオファーだった。

過去11度決勝で敗退...甲子園出場の悲願叶えたい

旭川東は今年で創立120年を迎える道内有数の進学校。1903年の創部以来、北海道大会の決勝に11度進んでいるが、一度も甲子園の土を踏んでいない。2022年夏も北北海道大会決勝に53年ぶりに進んだが、敗れている。イチロー氏は「悲願を叶え、未来の礎となるきっかけを残せたら」と、2020年に初めて智弁和歌山(和歌山)を訪れて以来、7校目となる訪問を決めた。

イチロー氏

サプライズではなく、事前にイチロー氏の訪問が知らされていた部員たち。10月11日の練習終了後、西中剛志監督は部員を前にこう切り出した。

監督:大きな力をくれる人がここに来てくれることになった。スペシャルゲスト。どうだ?僕らが甲子園に行くために大きな力を貸してくれるスペシャルゲスト、誰だ?

部員:新庄(剛志、北海道日本ハムファイターズ監督)さん?

監督:ああ、ビッグボスね。確かに北海道に住んでるし。それはすごい話だよ。当てずっぽうで誰だって言ってみて。この人に来てくれたらうれしいなって。今津いくか?

今津良介選手(1年):鈴木さん。

監督:どこの鈴木さん?

今津選手:鈴木一朗さん。

監督:鈴木一朗さん、知ってる?どんな人か言ってみて。

今津選手:左バッターでメジャーで活躍して、打率が高くて、足も速くて、全部そろってる選手です。

監督:それ正解だ。来るよ!

その瞬間、部員たちはみな驚きの表情を浮かべた。訪問日までの口外禁止を伝えられ部室に戻った彼らは「マジエグい!俺絶対言っちゃう!」「マジでダメ!ダメ!ダメ!」と、一様に興奮した様子だった。